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生き様を物語る六つの小さい仏が尊い

私の初恋にして最愛の仏像、空也上人(くうやしょうにん)像について語らせていただきます。狭い意味でいうと空也上人像は「お坊さんの像」なので仏様をかたどった仏像ではありません。

しかし一般的には広い意味で仏教に関連する像として「仏像」と捉えます。

空也上人は平安時代の中期に活躍した僧侶。六波羅蜜寺の空也上人の肖像彫刻は、後の鎌倉時代に運慶の四男康勝が彫りました。僧侶の彫刻としては珍しく、立って歩く姿。しかも口から小さい仏像が六つピュ~ッと出ています。

これが彼のチャームポイントですね。町の人へ「南無阿弥陀仏」と唱えて歩き回ったシーンを、言葉1文字ずつを仏様にして表現しているものです。また、鹿の角がついた杖、首から下げた鉦を右手で持つ撞木で叩こうとしているポーズも個性的。

裸足に近いような足元、ボロボロの衣、切なげな表情など細部の表現がとてもリアルに彫られているのが特徴です。歴史の教科書やメディアで一度は見たことありますよね?

これさえ唱えれば救われる…仏像大好き芸人みほとけの初恋にして最愛の「推し」、空也上人のありがたいお言葉_1
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では、こんな姿で表される空也上人とは、一体どんな人物だったのか……。彼は荒ぶ町に現れ民衆救済に生涯をかけた、市井のヒーローなんです!

時は平安時代、903年、空也さんの出自ははっきりしていませんが、一説には醍醐天皇の子どもか?なんらかの高貴な生まれでは?ともいわれています。若い頃から在家の修行者として全国を歩いて、亡骸を見つければ集めて油をかけて燃やし、念仏を唱えて弔う、という集団に属しました。20代には尾張国の国分寺で出家をして、また全国の山々に修行、そして布教の旅。四国のある島では観音菩薩にも出会ったそうです。

すごい。東は東北、西は中国・四国地方を歩いて巡るんだから、すごい移動距離です。もちろん都のお寺でも修行をしています。京都の神護寺や奈良の興福寺ではよく勉強なさったそうです。