音楽を聴く、つくる原点はMD
――CDではなく配信で音楽を聴くことが主流になり、音楽の楽しみ方はここ数年でガラリと変わりました。川嶋さんも音楽との向き合い方に変化はありましたか?
本当に私事ですが、私は5~6年前までMDウォークマンで音楽を聴いていました(笑)。ただ、MDもMDウォークマンも街から消えてしまって、配信で聴くという現代的な聴き方に泣く泣く移行したんです。
――最近までMDで聴いていたんですね。
MDコンポでMDに録音している間に歌詞カードを見て、その楽曲に込めた思いを想像する時間が本当に好きでした。また、友達とMDを交換して、好きな曲を聴き合ったりした時間も大切な思い出です。
――ちなみに、MDにまるまるアルバムを録音するタイプでしたか? 自分のプレイリストを組んで録音するタイプでしたか?
好みのプレイリストを組んで録音していましたね(笑)。いちいちCDを入れ替えるのは面倒でしたが、1曲1曲に向き合えるぜいたくな時間だったと思っています。そういった手間さえも、今となってはとても楽しかった記憶です。
――自身の楽曲もMDを意識して制作していたのでしょうか?
そうです。やはり「MDに録音している最中に歌詞カードを読んでほしい」という気持ちが強くて、読んでほしくなるような作詞づくりを今でも意識しています。とはいえ、全アーティストが読んでもらうために歌詞にこだわっているとは思いますが……。
――具体的に意識したことは?
サビで「ここの歌詞ってなんて言ってるのかな?」と思ってもらえるようにしたり、文学的な言い回しにしたり、歌詞が気になるような工夫をしています。最近はTikTokやYouTubeのショート動画が全盛の時代なので、BGMとして楽曲が使われるとき、基本的にはサビから使われるので、サビの導入はキャッチ―な言葉を使うようになりました。
――“時代の変化にアジャストする”という意味では、イントロやギターソロは飛ばして聴く人も少なくない今、楽曲制作における苦労は尽きないのでは?
全然ありません。そうした傾向が見られることを「おもしろい」と考えています。むしろ短い曲が好まれているので、「もっと短い曲をつくりたい」という気持ちも芽生えました。