「老害」と「ソフト老害」の違い

60代、70代の「老害」と40代の「ソフト老害」はちょっと違う。

40代になり、会議に出席し、自分が一番上に立つ。僕ら放送作家の仕事というのは、誰かのパートナーになることが多い。

プロデューサーや総合演出と言われる番組を作る一番の責任者のブレーン的パートナーとなる。

自分の一言で全てが決まっていく時も数々あるし、時には、プロデューサーや総合演出の気持ちをアシストすることもある。
 
20代の時よりも、全体の「バランス」を取ることが多くなる。ただ、自分の発言力が大きいため、バランスを取っているはずの僕の言葉は、結果、若者たちが必死に考えてきたことを妨害することになっていた。

これ、どの会社でもあるのではないでしょうか?

40代になり、20代、30代とは違い、会社全体のことを考えて動かなきゃいけないポジションになる。

そのポジションに立ったからこそ、会社のことを考えて発言していること自体が若い世代からするとソフト老害になっていたりする。

そして、例えばそのプロジェクトがうまくいっている時はいいが、うまくいってない時。「上の人」からは、なんとかうまくいくようにツツかれる。

若い世代からは、自分たちのやりたいようにやりたいと言われる。

こういう時に、自分は「上の人たち」とは違うよというフリをしながら、若者たちを説得するようにして、結果、走る方向を変えさせていく。あるあるだ。だが、これもソフト老害と言えるだろう。

誰も傷つかないようにとバランスを取っているつもりだが、20代、30代からしたら、そのバランスを取っている行為が、妨害行為になっている。

良かれと思ってやっていることは、ソフト老害になっていることが多いのだ。

40代は老害なんて関係ないと思いがちだが、40代から始まっているのだ。それを自覚した方がいいと本当に思う。

僕は、三谷DのVTRを見てから決めたことがある。バランスを取るのはやめようと。

自分が違うと思ったことは、オブラートに包んで言ってるつもりだったが、結果、それがソフト老害になるならば、なぜ違うのかをハッキリ伝える。

そして、嫌われるなら正面からちゃんと嫌われようと。嫌われることを恐れてうまくやろうと思うから、逆にソフト老害になるのであって。

嫌われることを恐れずに、ハッキリ伝えるようにした。

そんな僕がどう思われているかわかりませんが、もし自分が若者だったら、そんな「大人たち」の方が気持ちよく映るのではないかなと思っている。

僕が今の仕事を「辞めよう」と思った理由の一つに、40代以降、どうしてもバランスを取る立場になることが増えてしまい、自分の行動がソフト老害になっているのではないか、と思ったのもある。

仕事の辞め方
鈴木おさむ
「老害」よりもタチが悪い40代からの「ソフト老害」。放送作家・鈴木おさむが仕事を辞める理由にも「よかれと思ってやったことが、若い世代の妨害行為に…」_03
2024年1月24日
1650円(税込)
A5判/216ページ
発行:幻冬舎
ISBN:978-4-344-04206-3
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32年間やった放送作家を辞めます。

○40代からソフト老害
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