21世紀最悪の殺戮者プーチン
未遂に終わったが、大きな注目を集めた暗殺事件が、2018年に発生した英国亡命中のセルゲイ・スクリパリ元GRU大佐の毒殺未遂だ。
これはGRUがやはり軍用毒物「ノビチョク」を使った犯行で、英国政府が激怒し、日本以外の多くの西側諸国がロシア情報部員(公式には大使館員)追放などの外交制裁を行うほどの事態に発展した。このように、今回のナワリヌイ氏の不審死は、あくまで氷山の一角に過ぎないのだ。
他方、プーチンが最も多くの殺戮に責任があるのが、シリアでのロシア軍介入だ。プーチンの命令により、2015年以降の現在まで、シリア国民を殺戮するアサド独裁政権を支援するためにロシア軍機が一般のシリア国民を殺戮している。
その直接の犠牲者数は1万人弱だが、それだけではない。
ロシアの軍事介入で一時は劣勢だったアサド政権が生き残り、一般住民への凄まじい殺戮を続けたのだ。それによって殺害された民間人は20万人以上とみられるが、その多くはいずれもプーチンがいなければ死ななくて済んだかもしれない命である。
このようにウクライナ侵攻時点で、すでにプーチンは21世紀最悪の殺戮者といえた。こうした経歴を知っていれば、プーチンがもともとヒトラーやスターリン、あるいは毛沢東やポルポトといった20世紀の大虐殺者たちと同じカテゴリーの人物だとわかる。
そして、そんなプーチンはウクライナでも無益な殺人を続けており、ウクライナ側の犠牲者はすでに7万人以上とみられる(ウクライナ側の死者数は未公表だが、「ニューヨーク・タイムズ」記事などを元に推定)。プーチンは殺戮の記録を、今も更新し続けている。
文/黒井文太郎