プーチンに暗殺された要人たち

また、今回のナワリヌイ氏のように、プーチンに反逆した人々の中に、プーチン政権の秘密工作によって暗殺されたとみられる人物も多い。たとえばチェチェン戦争に関する政権の暗部を暴いた、ロシアの独立系新聞「ノーヴァヤ・ガゼータ」の記者でジャーナリストのアンナ・ポリトコフスカヤ記者は、2006年に自宅エレベーター内で射殺された。

また、同年には、英国に亡命して反プーチン運動に参加していたアレクサンドル・リトビネンコ元FSB中佐がが放射性物質で毒殺された。

さらに、プーチンと激しく対立していたエリツィン政権時代の最大の新興財閥だったボリス・ベレゾフスキー氏は、2013年に亡命先の英国で変死した。

写真/Shutterstock
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2015年にはプーチンの政敵だったボリス・ネムツォフ元第1副首相が、モスクワ市内の橋の上で射殺されている。

2018年には民間軍事会社「ワグネル」のシリアでの活動を取材していたマクシム・ボロジン記者(ニュースサイト「ノービ・デン」所属)がエカテリンブルクの自宅アパートから転落死した。ボロジン記者は死亡前に友人に「バルコニーに銃を持った男がいて、階段にはマスクを被った迷彩服姿の男たちがいる」と電話していたという。

暗殺された人々だけでなく、暗殺未遂に遭った人も多い。特に狙われたのがポリトコフスカヤ記者やボロジン記者のような独立系メディアのジャーナリストで、暗殺未遂も含めるとほぼ毎年、複数人の被害が出ている。

ロシア国外でも前出のリトビネンコ氏のように命を狙われた反プーチン派は多い。特に多いのはチェチェン武装組織の元幹部などで、そうした海外での暗殺を実行する秘密組織として、FSBの特殊部隊「ヴィンペル」内の特殊班や、軍参謀本部情報総局(GRU)の工作部隊「29155部隊」が存在することがわかっている。これら国外での暗殺を含めると、反プーチン派の人物の暗殺または不審死のケースは、2022年のウクライナ侵攻以前に優に100人を超える。