先輩社員に嫌味を言われ傷つく

大学に入ってからは友だちや彼氏の家に泊まって、なるべく家にいる時間を減らした。母から逃れることしか思いつかなかったからだ。

大学卒業後はアパレルの販売店に就職した。新規オープンする店舗に配属され、開店の準備にあたったが、2か月ほどで仕事に行けなくなってしまう――。

まだガランとした店内に商品が届き、「整理をして」と命じられても、新人の野中さんにはどうしたらいいのかよくわからない。正直に「わかりません」と言ったら、女性の先輩社員にバカにされた。
 

「えー、そんなこともできないの」

野中さんが男性社員に可愛がられるのも、先輩女性は気に食わなかったようで嫌味は続く。野中さんはどんどん疲弊していった。

「もともと人の気持ちには敏感だったので、毎朝、『あ、嫌われているな』って感じるのが、ちょっとしんどくて。それに、新しい環境に慣れるのが大変で、感覚が過敏になっていって、ちょっとしたことで涙が止まらなくなったりしました。

でも、嫌な気分を晴らしたくて、仕事が終わってから以前のバイト先の友だちと飲みに行って、翌朝、エナジードリンクを飲んで、何とか仕事に行く。そんなことを続けていたら、精神的に不安定になってしまって……」

写真はイメージです
写真はイメージです

あるとき、「親にずっと言えなかったモヤモヤした気持ちを伝えたほうがいい」と友人たちに勧められ、皆に見守られて両親と話をした。ところが、母親は泣いて謝るばかり。仕事が忙しくて、ふだん家にいない父親は「何を言ってるのかわからない」と話が通じない。

野中さんは衝動的にビルから飛び降りたくなったが、ビルの中で窓は開かない。トイレの個室に飛び込むと、なぜか着ている服を脱いだのだという。

「自分でもよくわからないけど、人でいたくなくなったというか、消えてなくなりたかったのかな……」