金正恩氏にとってはプーチンが1番、習近平はその次
しかし北朝鮮は今も中国人観光客の受け入れを再開せず、春節のハイシーズンもふいになった。中朝関係が水面下で緊張し、一般の中国人の訪朝の可否で折り合えていない模様だ。さらに北朝鮮とロシアの接近が中国の態度を硬化させている可能性がある。
1月18日、北朝鮮メディアは金正恩氏が友好国の首脳に年賀状を送ったことを報じた。その筆頭に挙げられたがロシアのプーチン大統領。中国の習近平国家主席は2番手扱いだった。北朝鮮がロシアを中国よりも重視していると公言したことになる。
北朝鮮は数万人ともみられる出稼ぎ労働者を中国に派遣し、中国は滞在ビザが切れた者の帰国を促している。北朝鮮は交代の人員を中国に送りたいが、17年の安保理制裁決議が北朝鮮労働者の雇用を加盟国に禁じたことから中国は就労ビザの発給を拒んでおり、中国に対して不満を抱いてきた。
昨年9月のロシア極東での金正恩・プーチン会談の後、兵器を含む貿易を拡大し、緊密化が進むロ朝関係に中国は一切の論評を避けてきたものの、ロ朝両方への影響力が相対的に低下したため心穏やかではないはずで、「年賀状報道」でメンツもつぶされた。
2月10日、北朝鮮メディアはロシアから「第1次観光団が平壌入りした」と伝えた。コロナによる出入国統制の開始以来初の観光客をロシアから受け入れ、これを春節直前にもってきたのは中国への当てつけの意図があるかもしれない。
ロシア人客だけでは観光インフラを有効活用できないことは明らかだが、中国からの観光収入を捨てるだけの価値がロシアとの関係にはあると金正恩氏は考えている気配だ。
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班