「実質的な追加負担なし」の論理破綻
この拠出に関して首相は2月6日の衆院予算委で「歳出改革と賃上げにより、(国民に)実質的な負担は生じない。『子育て増税』との指摘はあたらない」と強調した。
首相の言う「実質的な負担は生じない」とは、「子ども・子育て支援金」の徴収開始後も、税と社会保障の負担額を国民所得で割った「国民負担率」を上げないようにする、という論理だ。
税と社会保障の負担額を下げ、国民所得を賃上げによって向上させれば、「子ども・子育て支援金」を公的医療保険に上乗せして徴収しても、実質的な追加負担は生じないとの説明だ。
だが、「実質的な負担なし」論は、すでに破綻しつつある。
まず、税と社会保障の負担額は、歳出改革によって軽減するとしているが、その改革として政府は、医療費の窓口負担が3割となる「現役並み」の所得がある高齢者の範囲を拡大するなどの方策を検討しており、高齢者の負担は大きくなる見込みだ。
そのうえ、来年度には医療従事者の人件費に回る診療報酬も引き上げられるため、歳出改革が進むかは見通せない。
さらに国民所得に関しても、賃上げが進んでいるとは言い難い。首相が「月平均500円弱」という拠出額を明らかにした6日、厚生労働省が発表した2023年の毎月勤労統計調査(速報)では、実質賃金が前年比2.5%減となり、2年連続で減少したことが明らかになった。
「実質賃金は下がるのに、税と社会保障の負担は増えそう。そのうえ、月平均500円弱の上乗せも求められては、国民の反発は必至です」(全国紙政治部記者)