値下げで集客力向上を狙うガスト
インフレのさなかで値下げを行ったのが「すかいらーく」だ。同社は2022年に2度の値上げを実施したが、2023年11月に価格改定でガストの主力メニューの一つである「チーズINハンバーグ」を50円値下げするなど、30品目の見直しを行った。
ガストを運営するすかいらーくは2022年12月期に55億7500万円の営業損失を出すなど、コロナ禍から完全回復しきれていなかったが、2023年1-6月に営業黒字化を実現した。収益性の回復は、値上げによる客単価上昇の影響が大きい。
2023年は2019年と比較して、客単価は1.2倍に上昇している。仮に2019年の客単価が800円だったと仮定しよう。そうすると、2023年は970円まで上がったことになる。
すかいらーくは2022年7月、10月に一部店舗で5%程度の値上げを実施しているが、2022年の客単価の伸びは限定的だ。値上げ効果がフルで寄与した2023年の数字がそのおかげで高くなっているのは間違いないが、2022年比で1割近く上昇している。
すかいらーくもサイゼリヤ同様、消費者意識の変化の好影響を受けている可能性がある。そこで、値下げで集客力を高めようと考えたのだろう。
値下げを行ったことで、2023年11月、12月の客数は前年同月比で12.6%それぞれ増加している。10月の客数は9.9%の増加だった。稼ぎ時の年末に効果は出ているように見える。気になるのは、インフレ下においても、大手ファミリーレストランが低価格を集客フックにしている点だ。消費者が財布のひもを緩めはじめているのは間違いなく、多少高くても質の高いものを求めている姿が浮かび上がっている。
中長期的に収益性を高めるためには、高単価のメニューを追加するなど、消費動向をとらえた店舗運営、メニュー開発が必要になるかもしれない。
取材・文/不破聡