日本と韓国のどちらが豊かなのか?

以上の検討によって、国民1人当たりGDPと平均賃金、あるいは生産性(就業者数当たりのGDP)のどれを見るかによって見え方が異なる場合がある理由が分かった。しかし、「では、どちらの国が豊かなのか?」という問題が依然として残っている。

1人当たりGDPは、一見したところ「国民1人当たりで1年間にどれだけを使えるか」を示しているように思われる。

しかし、GDPの中には、消費だけでなく、設備投資や政府支出も含まれている。これらは、個人の支出ではない。

さらに、GDPには固定資本減耗引当が含まれている。これは、誰の所得にもならない。それに対して、賃金は、就業者が自由に使える。

日本と韓国、どちらが豊かなのかの最終結論…平均賃金は韓国のほうが上であるという明確な事実をどうとらえるか_3
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その意味では、平均賃金が高い国のほうが豊かだと言えよう。また、賃金が高ければ、一定の所得を得るための労働時間は少なくて済む。そして、働かない時間(レジャー)は、経済的な意味を持っている。それが多いという意味では、高賃金が豊かさの指標としてより適切だと言える。また、就業者1人当たりのGDP(生産性)が高いということは、高度な技術を持っていることを示すとも言える。

以上を考えると、1人当たりGDPより、賃金や生産性のほうが豊かさを適切に表している指標だと考えることができるだろう。

政府次第で、日本はまだ復活できる
日本でMMTをやっても効果はない

写真/shutterstock

どうすれば日本経済は復活できるのか(SB新書)
野口悠紀雄
日本と韓国、どちらが豊かなのかの最終結論…平均賃金は韓国のほうが上であるという明確な事実をどうとらえるか_4
2023/11/7
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296ページ
ISBN:978-4815610104
日本経済はデジタル化で復活させるしかない!

日本経済が危ない。

物価高騰は止まらないのに、賃金は上がらない。超高齢社会で労働力の低下は止まらない。1人当たりGDPがG7トップから最下位へ転落。etc.

日本はこのままで大丈夫なのか。危機的な状況にある日本経済への処方箋を提言する

デジタル化が日本経済を再生させる~付加価値と生産性で見る日本経済論
第1章 G7のトップから最下位へ
第2章 なぜ日本経済は停滞したのか?
第3章 今後の日本経済はどうなる?
第4章 日本が直面するスタグフレーションの恐れ
第5章 金融政策の誤り
第6章 マイナンバーカード「迷走」曲
第7章 生成AIという大変化に対応できるか?
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