候補者たちが次々とトランプ別荘詣で

じつはオハイオ州ではヴァンス氏以外の共和党候補も、トランプ氏のお墨付きを得ようと、し烈な戦いを繰り広げていた。

当初、共和党の最有力候補と目されていたのは元州財務長官のジョシュ・マンデル氏だった。予備選では極右政治家らしく、「宗教にイエス、銃所持にイエス、トランプにイエス」と叫ぶなど、トランプ氏へのすり寄りはピカイチで、選対にはトランプ陣営のスタッフが多く参加していた。

そのマンデル氏も含め、オハイオ州上院予備選候補者が大挙して、フロリダ州パームビーチにあるトランプ氏の別荘・マール・ア・ラーゴに馳せ参じたのは昨年のこと。もちろん、トランプ氏に面会し、当選の「特効薬」――推薦を受けるためだ。

出席者の証言によれば、一堂に会した候補者はトランプ氏にアピールしようと激しく論戦し、ついにはブチ切れ、互いに罵倒し合ったという。しかし、ここで展開されたトランプ氏への「忠誠心」競争に勝者は出ず、結局、その場にいなかったヴァンス候補が推薦を手中にし、漁夫の利を得る形となった。

選挙を控えるライバル候補同士を別荘に呼んで「プレゼン」競争させ、求心力を高めるトランプ氏のこうした手法は、自らが司会をしていた人気TV番組「アプレンティス」の番組構成そのものだ。

共和党の予備選に出馬する候補者の多くが、昨年から熱心にこの「マール・ア・ラーゴ詣で」を続けている。それもありきたりの参拝ではない。

敷地面積1万平米、時には結婚式場としても利用される広大なマール・ア・ラーゴでわざわざ政治資金集めのパーティ(ファンドレイザー)を開いたり、トランプ氏がよく視聴するとされるFOXのスポットCM枠を買い取り、トランプ礼賛メッセージを流して歓心を買おうとするなど、じつに手が込んでいる。

過熱する一方のトランプ推薦獲得合戦で、もっともドラスティックだったのが、ジャニス・マクギーチンアイダホ州副知事のケースだ。

彼はトランプ氏がお気に入りの保守派論客・タッカー・カールソン氏が司会を務めるFOXニュースのインタビュー番組に出演。そこでトランプ礼賛をしたところ、翌日には「ニューヨークのトランプタワーで会おう」とトランプ氏からマクギーチン副知事のもとに連絡が入り、推薦を手中にすることができたのだ。

米中間選挙の共和党予備選挙は5月、6月が山場となる。そこでトランプ氏の推薦を受けた候補が何人当選するのか? その「確率」は共和党内での、トランプ氏のパワーを測るバロメーターとなるはずだ。