「両親の生き方を参考にした部分もありました」

一方カナミは、熱海で週末を過ごすのは月に2、3回。何よりの温泉好きというカナミは、熱海にいる間は自宅マンションの温泉だけでなく、車であちこちの温浴施設に出かけるのが一番の楽しみだそう。

東京で過ごす週末は、美容室、ネイルサロン、買い物、映画館などへ。二拠点のいいとこ取り生活を実践中だ。

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カナミの勤務先がある青山の街はちょうどイルミネーションの季節

定年後は東京のマンションを引き払い、熱海に完全に引っ越す予定だという夫妻。これからの目標は、熱海で共通の趣味を持つ友人やコミュニティを見つけること。

「このマンションは僕らのように週末利用の住戸や、会社の福利厚生施設として借り上げられている住戸が半分くらいあり、ご近所付き合いというものがまだありません。これからは釣りを始めたいのと、犬を飼いたい。そんな趣味を楽しむ中で、新しい仲間との繋がりができたらいいなぁと思っています。

子どもも自立したし、会社での社会的責任も減ってきたので、今後はここでの新しい生活を充実させていきたいです」(ユウイチ)

熱海のマンションから、晴れた日には初島が見える
熱海のマンションから、晴れた日には初島が見える

コロナ禍というきっかけがあったにせよ、20年以上暮らした世田谷のマンションを売却、熱海のマンションを購入し、東京との二拠点生活を開始した夫妻の行動力には目を見張る。

カナミは「私の両親の生き方を参考にした部分もありました」と、話してくれた。

「私の実家はもともと千葉県でしたが、両親は父の定年後60歳で長野県へ引っ越しました。庭で野菜を育て、山歩きをし、囲碁教室で近所の子どもたちに囲碁を教えるなど、長年の夢だった田舎暮らしを実現したのです。

今は神奈川県の高齢者住宅に住んでいますが『長野での暮らしが本当に楽しかった』と口癖のように言います。そんな両親の移住生活を見て、理想的な第二の人生だなと憧れていたことも、熱海に拠点を持つにいたった理由だと思います」(カナミ)