若手を活かす職場、二つの要素
では、現代において若手が意欲をもって仕事に全力投球できるのはどんな職場なのか。そのヒントがある。リクルートワークス研究所が、1〜3年目の社員2985名に2つの時期で調査したデータを用いて検証すると、若手が活躍する職場には「二つの要素」が存在していた。
一つは、職場の「心理的安全性」である。その職場で自分が何かを言ったり始めたりしても誰かに言下に却下されたり、人格を否定されることがないという認識で、「チームのメンバー内で、課題やネガティブなことを言い合うことができる」「現在のチームで業務を進める際、自分のスキルが発揮されていると感じる」という職場だ。広く共有された概念であり、その重要性に異議のある方は少ないだろう。
もう一つ、心理的安全性と同様に新入社員のワーク・エンゲージメントにプラスの影響を与えるものとして、職場の「キャリア安全性」とも言える要素が存在していた。キャリア安全性は、「所属する会社の仕事をこのまま続けていれば成長できる」「自分は別の会社や部署でも通用する人材に職場の仕事を通じてなることができる」といった認識の高さであり、若手が自分のことを俯瞰して、“自身の今後のキャリアがいまの職場でどの程度安全な状態でいられると認識しているか”を捉える尺度である。
このキャリア安全性は、心理的安全性とは独立(互いに相関がない)したファクターであった。自分のキャリアが現職を続けることでどう展開しうるのか納得し安心して初めて、その職場での仕事に打ち込める。これは変動の激しい現代社会において、漠然とした不安を抱える若手の生存本能が与えた感覚と言えるかもしれない。企業が最後まで面倒を見てくれる保証はないのだから、自分の職業人生を安定させられるのは、自分が身につけた経験や知見・技能でしかないのだ。