「呼吸を読まれているような気がした」
泰然自若の構えと思いきや、目の前から瞬時に姿を消す。この「足が遅い」と呼ばれた選手は、ボールを持てば誰よりも速かった。ゴール下の番人であるビッグマンのブロックをかわすようにシュートモーションに入るが、フィニッシュは得点ではなく、代名詞であるノールックパスによるアシスト。憎いほどの華麗なパフォーマンスに相手すら息を呑む。
身長173センチのその1年生は、コートでは誰よりも雄大だった。
福島工の3年生エースで、96年の「ナンバーワンプレーヤー」の呼び声が高かった渡邉拓馬は、田臥に強者の風格を見たという。
「バスケットをやった人間にしか感じられないオーラ。田臥には、1年のときからそれをものすごく感じていました」
田臥がコートで発する威圧は世代を超える。
高校、大学、社会人が覇権を争う、「真の日本一決定戦」オールジャパンの予選でのこと。社会人チームにも、田臥とマッチアップし、こうたじろぐ者がいたという。
「呼吸を読まれているような気がした。自分が息を吐いた瞬間にドリブルで抜かれたり、本当に一瞬の隙を突いて仕掛けてこられた」
9冠の幕開けとなる1996年、スーパー1年生がコートで衝撃を放つ。インターハイ計158得点、国体計88得点、ウインターカップ計155得点。
3冠を成し遂げた能代工において、田臥は誰もが認める立役者だった。
文/田口元義 写真/産経新聞社
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