ばっさり捨てる
相手に伝わりやすくするためには、余分なものを捨てることが大切です。
でも、捨てることが大事だとわかっていても、人間は「捨てること」が苦手です。
●押し入れに「すぐには使わないけれどいつか使うはずのもの」があふれている。
→「いつか使うはずのもの」を使うことは、ほぼ確実にない。
●洋服ダンスに「いつか着るはずの衣類」がぎっしり。
→もはや、自分がそのサイズは入らなくなったことすら気づかない。
●ハードディスクに「以前、仕事で使用した資料ファイル」が満載。
→99%読み返すことはない。そもそも思い出すことすらない。
「何かを失うことが怖い」というのは、人間の本能です。しかし、捨てることを恐れていると、「ただの話が長い人」になってしまいます。
何分にもわたってプロポーズを述べているドラマを見たことがあるでしょうか?
ないはずです。あれは、時間の制約からそうなっているわけではありません。
「あの、僕は君と一緒に暮らしたいんだけど、いや、そう思っているのは僕のエゴというか、べつに僕だけが幸せになりたいからじゃなくて……あ、というか、この場所でよかったんだっけ? 君のお気に入りの場所。前に好きって言っていたような……あ、そうだよね、違ったんだ、ごめんね。そういえばプロポーズってプロがするどんなポーズなんだろうね、アハハ……」と、延々と冗長なプロポーズを聞かされたら、相手はだんだんと不安になってしまうはずです。
私たちコピーライターの世界でも、「情報過多は、伝えないより悪手である」というのは常識です。あれもこれも詰め込みすぎると、何も伝わらないどころか「余裕もセンスも感じられない広告」ができあがってしまうのです。
「伝える」と「伝わる」の違いとは?
あるとき、同じ業界の大先輩にこんなクイズを出されました。
「伝える」と「伝わる」の違いはなんでしょう?
私は必死に考え、
●伝える→伝えるという「行為」
●伝わる→伝わったという「状態」
このような違いだと答えました。
するとその先輩が、「それは間違いではないけれど、英語にしてみてごらん。よりその違いがわかるよ」と言うので、私は辞書で調べてみて「あっ」と叫びました。
●伝える→TELL
●伝わる→GET
そう、伝わるは「GET」だったんです。
つまり、伝わるということは「何かを得ている状態」と定義することができるのです。
「一方的に伝えるのではなく、相手に伝わって初めて、何かを得たり、生み出したりすることができる。言葉を使う職業を続けていくのなら、このことを忘れちゃダメだよ」という先輩からの教えは、私の大切な言葉の手帳にキープされています。