国境を超えて連帯する先住民コミュニティ
土地やアイデンティティを奪われてきた共通の背景を持つ先住民たちは国境を越えて連帯する傾向がある。各国の「少数派」だけでは、訴求することに限界があるため、先住民たちは国境を越えて手を取り合い、「先住民」というコミュニティをもって、さらなる搾取に抵抗しようとしている。
そのつながりはSNSとともに育ってきたミレニアム世代やZ世代によって、さらに可視化・強化されている。インスタグラムの24時間限定のストーリーや、TikTokの動画投稿では日々、先住民とパレスチナの連帯を示す投稿が流れている。
彼らは「イヌイット」などのそれぞれの民族名よりも、「先住民」を意味する英語「インディジネス(Indigenous)」をあえて用いて連帯を示している。そして、その連帯を世界的な動きであることも強調する。
パレスチナ人の「先住民性」とは
「パレスチナ人は先住民なのか」という問いに意見はわかれるだろう。
ここで注目すべきはパレスチナ人のもつ「先住民性」(Indigeneity)だ。パレスチナ人がいた土地をイスラエル人の土地だと主張することで、パレスチナ人の先住民性は剥奪されている。各国の新パレスチナ派を表明する先住民は、パレスチナ人の「先住民性」に共鳴をしているのだ。
先住民性という言葉の解釈はさまざまだが、テリトリー、文化、コミュニティ、伝統に関連した自分たちの固有性、アイデンティティ、先住民らしさに関係している。国家や国際社会が先住民族に対して行ってきた非人道的、植民地化的、抑圧的な扱いに注意を喚起するものでもあり、世界的に「先住民」の共通意識を表すものでもある。
民族間同士で歴史的に、また現在においても差別・迫害・抑圧を体験し、今も不平等な状態が続いていること。あるいは、植民地侵略に遭い、その後に続く排除の構造に苦しみ続ける人々、自分たちの権利のための闘い、解放運動、植民地支配、殺人的な歴史、失われる土地と命、征服と支配の抵抗、資本主義、新自由主義的な帝国主義というようなものとの闘いの意味合いが含まれることもある。
かたや、「先住民らしいもの」として、先住民自ら、または外部の者がスピリチュアルな世界観や食生活をゲームなどに商品化することを「先住民性」(Indigeneity)のビジネス化・商品化・資本主義化という意味合いで話されることもある。
ここでは「先住民性」は前者の、植民地状態が歴史的に今も続く不平等な状態という意味合いで用いている。