“昭和の負の遺産”とも言われる現在の空き家問題、そもそも何がネックなのか
空き家調査が開始された1960年代から、空き家率は増加の一途をたどるばかり。いまや7軒に1軒は空き家という実態があり、持ち家率が高い団塊世代が75歳以上の後期高齢者になる2025年以降、さらに急増する恐れがある。
ただ、そもそも空き家であることは何が問題なのだろうか。
「空き家問題には大きく分けて3つの問題があります。1つ目は建物の老朽化による景観の悪化や、草木の繁茂によることによりハクビシンや害虫などが住み着くといった住環境の問題。
2つ目は台風やゲリラ豪雨、地震などの自然災害による建物倒壊など、災害時のリスクが高まる問題。
3つ目は不法投棄や不法侵入、敷地内の設備や物品の盗難といった被害に合う治安の問題。空き家に放火するというような事件もあり、犯罪の温床となってしまう可能性が高い。
このように長らく放置されている家は景観・環境・災害・犯罪など、さまざまな問題を引き起こす要因となってしまうのです」(不動産評論家・牧野知弘氏、以下「」内コメントは同)
それならば、所有者はすぐに解体や売却をしたほうがよさそうだが、それができずに放置されてしまう理由は何なのか?
「ご両親の思い出として残しておきたいという人もいますが、いちばんのネックになっているのは解体・更地化したときにかかる税金や費用などの金銭問題。
現在、産業廃棄物のルールが厳しくなり、作業自体が複雑化してしまったため、建物の解体費用が非常に高騰していて、標準的な一軒家でだいたい150万円、少し広めの家だとおよそ200万円もかかってしまうのです。
そして不動産の条件によっては、建物を解体して土地を売却しても手元にお金が残らず、むしろマイナスになってしまうといったケースも多々ある。父母世代、祖父母世代が建てた家にまったく価値がなく、逆に手放すためにお金がかかってしまうという空き家が、“昭和の負の遺産”と呼ばれているのでしょう」