夫婦で住んでいてもゼロではない「孤独死リスク」

夫婦で住んでいるから大丈夫! というのも大きな誤解です。夫婦であっても、どちらか片方が亡くなったり認知症になったりすれば、残された方は「おひとりさま」です。

そのおひとりさまが倒れた場合、誰が気が付いてくれますか? 毎日欠かさず、誰かと連絡を取り合いますか? 連絡がつかなければ、すっ飛んできてくれますか?

もしくは見守りサービス、利用していますか? その見守りサービスのアラート、誰が受けてくれますか? 365日対応してくれますか?

そもそも毎日心配して連絡を取り合える家族がいるなら、見守りサービスを利用する必要はありません。見守りサービスの難しさは、そのアラートを受けてくれる人がいないことなのです。

セキュリティ会社が、部屋の鍵を預かってくれるサービスがあります。何かあれば駆け付けて、鍵で入室までしてくれます。でも彼らができることは、倒れているあなたを見つけて救急車を呼んでくれるまで。入院等の手続きはしてくれません。

「奥様に拘束衣をつけてもいいでしょうか?」大山のぶ代が認知症を発症する前に経験した、知られざる2度の闘病生活。その病名と実情とは_2

それは仲の良い友人や近所の知人に、鍵を預けていたとしても同じことです。もともとは先方も、好意で鍵を預かってくれたかもしれません。でもその鍵が必要になる時は、こちら側が弱っている時。

たとえば認知症の兆候が見られるようになると、大切な物やお金を自分で泥棒に見つからないように隠してしまい、それを忘れて「泥棒が入った」と大騒ぎになることが多々あります。

そのような中で、鍵まで持っている友人がいたとしたら、好意で預かっていたにもかかわらず、泥棒呼ばわりされかねません。そこで一気に、今までの良好な関係性は崩れてしまいます。こんな悲しいこと、ないと思いませんか?

しかも万が一の第一発見者って、事件性を疑われて延々と警察から事情聴取を受ける羽目になってしまいます。だから安易に鍵を預けるだなんて、絶対にしちゃいけないことなんです。

もっと高齢になれば、介護サービス等を受けて、週に何回か誰か立ち入ってくれるかもしれません。むしろそうなった方が安心で、先にお話ししたような孤独死が多いのは、圧倒的に単身の現役世代なんです。

自分はまだまだ高齢者でもないから大丈夫、そんな風に安易に考えていたら、物件の価値を下げてしまうことにもなりかねません。

「自宅で倒れて一番困るのは浴槽の中」…夫婦で暮らしていても起こりうる「孤独死リスク」を防ぐ方法とは?_3
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一度自分が室内で倒れた時のこと、想定してみてください。

誰が気付いてくれますか? どのようなルートで誰に連絡が行きますか? 自分に必要なのは、どのような見守りですか?

そういった対策を高齢になってから考えるのは、なかなか難しいもの。自分の不動産の価値を下げないためにも、同じ建物の方々に迷惑をかけないためにも、最悪のことをどうすれば避けられるのか、クリアな頭の現役世代のうちに考えておいてくださいね。

文/太田垣 章子 写真/shutterstock

#1 『「おひとりさまリスク」で最も考えるべきこととは…親世代なら「大きな病気で延命治療を受けたいか?」子世代なら…』

#2『事実婚、同性婚で残された側はどうすれば? まだまだ戸籍の力が強い日本。遺言書では不十分?』

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太田垣 章子 (著) 
「奥様に拘束衣をつけてもいいでしょうか?」大山のぶ代が認知症を発症する前に経験した、知られざる2度の闘病生活。その病名と実情とは_6
2023年11月8日発売
1,760円(税込)
279ページ
ISBN:978-4591179697
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