早慶戦は「人と人とをつなぐ場」でもあった

――大学で現役を引退する選手も大勢いる中で、あらためて「早慶戦」の意義についてどのようにお考えでしょうか。

五郎丸 ラグビーでは大学後もプレーを続けられる選手はごくわずかです。でも、高校、大学で経験した選手が引退後にラグビーを支えていく存在になってくれています。それはきっと早慶戦のような真剣勝負の場があったからだと思いますし、今、思えば「人と人とをつなぐ場」でもあったといえると思います。

廣瀬 ラグビー憲章にも掲げられていますが、ラグビーは「尊重」「規律」「情熱」「結束」「品位」という5つの価値を大切にするスポーツです。多様性やインクルージョンを包摂しますし、なおかつコンタクトもあるからキツい。それを4年間、仲間とともに取り組んでいくことで育んだ連帯感というのは本当に大きいですよね。

「人生で大切なことはすべて早慶戦に学んだ」組織論と真剣勝負、人とのつながり…スターOBが語るラグビー早慶戦の「人間賛歌」〈廣瀬俊朗×五郎丸歩〉_3
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五郎丸 勝敗は、瞬間的な結果ですが、人間関係は生涯続いていきますからね。

廣瀬 現に、いまぼくのプロジェクトにはたくさんの元ラガーマンが、かかわってくれています。大学の垣根もなく、そこには選手時代のレベルも関係ありません。

五郎丸 私もそうです。2016年にフランスのRCトゥーロンというクラブでプレーしましたが、慣れないフランスでの生活を支えてくれたのが、日本でのプレー経験がある外国人選手たちでした。

廣瀬 早慶戦は、毎年11月23日と決まっているじゃないですか。OBたちも同窓会のような形で応援にきてくれるし、これは学生時代からとてもよくできた仕掛けだなと感じていました。もちろん、これまで築いてきた伝統は大切ですし、ぼくらもタスキをつないできた自負がある。ただこれからも伝統に甘んじず、早慶戦は新たなチャレンジができる場であってほしい。そうすれば、50年後も100年後も早慶戦は意義を持ち続けるのではないかと感じます。

五郎丸 そうですね。今年100回目の早慶戦が迎えられるのは、たくさんの先輩たちの努力やチャレンジがあったからこそ。記念すべき100回目の早慶戦の舞台立てる選手たちには、仲間との時間だったり、その特別なフィールドを存分に楽しんでほしいですね。


構成/山川徹

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