プライバシーポリシーへの「同意」に潜む危険

この幹部はなぜ「同意する」にタップをしないのか。それはもともとLINEの利用規約に、「当社は、反社会的勢力の構成員(過去に構成員であった方を含みます。)及びその関係者の方や、当社サービスを悪用したり、第三者に迷惑をかけたりするようなお客様に対してはご利用をお断りしています」という項目があるからだ。

同意すれば、パーソナルデータをLINEが収集できるようになり、反社だと判明したならば、ユーザーのアカウントやデータ、コンテンツが削除されるだけでなく、トーク履歴やさまざまなデータも必要に応じて利用される可能性がある。

それでなくとも警察は暴力団に対しての取締りを強化しているのが現状だ。
スーパーのポイントカードの規約に暴排条項があったのに同意してカードを作成したり、親族名義のETCカードで高速道路を利用して詐欺に問われて逮捕された組長もいた。

※写真はイメージです
※写真はイメージです

「暴力団である俺たちは、利用規約やプライバシーポリシーへの同意にだって注意しないといけない」と幹部はため息をつく。

LINEはもともとダウンロードの際に前述の同意の必要がなく、ヤクザでも気軽に使うことができた。さらに「LINE Pay」は、銀行口座がなくてもチャージができる電子決済サービスで、口座を持てないヤクザたちには通信ツールとしてだけでなく、決済ツールとしても便利だったのだ。

「俺は同意をしてないから、そのうちアカウントを削除されるだけだが、プライバシーポリシーに同意して使っているヤツは、そのうちLINEの利用規約にひっかかって詐欺で逮捕されることもあうだろう。その第一号が誰になるかが今一番の関心ごとだな」(幹部)

誰もが手軽に利用しているLINEを使うだけで、ヤクザは御用となってしまうということか。

取材・文/島田拓
集英社オンライン編集部ニュース班