“小規模書店”ほど運営が厳しくなる中、新規オープンした取次直営店舗
今の僕が住む東京23区内の、私鉄最寄り駅の駅ナカにあった中規模書店と、駅前にあった小規模書店は、ここ10年の間に相次いで店を閉じた。
現在、家の近くには小さな書店が一つ残るだけだ。
6階建てマンションの1階部分にあるその書店は、客が店内に入るたびに奥の間からご主人が出てきて、おもむろにレジに立つ。
そして客の一挙手一投足を見つめ続けるので、正直言ってとても居心地が悪い。
そのためかいつも閑古鳥が鳴いていて、経営状態が気になるところだけど、推測するにその書店のご主人は、上に建つマンションのオーナーでもあるのではないかと思う。
マンションの管理や保守になるから、あるいは本好きなので趣味的に、片手間で店を開いているだけで、そもそも書店経営で稼ごうとは思っていないのだろう。
あそこがテナントだとしたら、その賃料を払えるほど、売り上げが出ているとはどうしても思えないのだ。
小書店はそういった特殊事情がなければ、この先はますます残っていけないのではないかと思っていた。
だが最近、そんな斜陽に陥る書店業界にとって、小さな光明とも言える出来事があったのをご存知だろうか。
9月26日、東京メトロ銀座線・南北線の溜池山王駅構内に、「ほんたす ためいけ 溜池山王メトロピア店」(以下、「ほんたす」)という、完全無人書店がオープンしたのである。
取次(出版物の問屋)最大手である日販(日本出版販売株式会社)が運営するこのお店。
入退店にはLINEミニアプリを活用し、決済は現金NGでセルフレジによるキャッシュレス決済のみとすることで、完全なる無人化を実現している。
店舗面積は15坪あまりと、書店としては決して大きくないが、この小さな小さな無人書店が、今後の出版業界、書店業界の行く末を占うのかもしれない。
「ほんたす」の試みは始まったばかりで、成功なのかどうかはまだわからないが、この新しい書店を手掛かりとして、書店業の興味深い未来が描けそうなのだ。