宇宙滅亡!? そして劇場版は…

1981年1月に第39話で放送が終了した『伝説巨神イデオン』。その最終回で描かれるのは無限のちから、イデをめぐって対立する二つの文明、その壁を越え愛し合い生まれようとしている新たな命。その結晶を厄き存在として抹殺すべく、全軍を挙げて追い詰めた星人バッフクランと人類の総力戦が今にも始まらんとしたときに画面が光に包まれ…唐突にナレーションで「その瞬間であった、イデの発動がおこったのは」。

光と共に総ての文明は無に帰して因果地平の名もなき星の表面で原生生物がその光を見上げて「今までご視聴ありがとうございました。ご意見をお寄せください。抽選で富野・湖川両名のサイン入りセル画セットをプレゼント。当選は発送を持ってかえさせていただきます」…ってな字幕が流れてます。

なんじゃこりゃー!
打ち切られたと後で風聞した『ヤマト』や『ガンダム』は、プラン通りにはならなかったとしても、まだ誠実にストーリー、ドラマの終わりを物語っていたではありませんか。
文字通りズカッと打ちのめされ、ぶった切られてます。これこそ、打ち切りです。

どうしてこんなことになるのか、納得がいかないのは私だけではなかったのでしょう、というか、もしかしたらそうなるのを見越してあんな最終回を仕掛けたのではないかとさえ思えるほどに未完のクライマックスは、「来年劇場版として製作、公開が決定!」と見出しが躍るアニメ雑誌の誌面で、登場人物の非業の死の瞬間や、主役ロボット、イデオンの表面が何か強力なエネルギーを受けてバラバラと剥がれ飛んでいく様子が、連続したコマで紹介されてます。

『ガンダム』の続きを期待するファンの希望を叩きのめす『イデオン』は、「俺たちへの挑戦状だ!」と燃えたった樋口真嗣。またしてもぶった切られるが擁護する!【『伝説巨神イデオン』】_3
宇宙の救世主(メシア)の誕生という、とんでもなく哲学的な展開へ…
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ヤバい! もうここまで進んでいたのに打ち切られたのか? この無念たるやさぞかし! これはテレビのクオリティじゃないぞ! もはや劇場版ではないか! という気合の入りっぷり…なんて田舎の高校生たる一視聴者が製作状況を鑑みてどうするんだ?と思いますが、お許しください。

劇場版公開まで待つこと1年半、と言いながらもその間は『ガンダム』劇場版3部作が順次公開されてたから待たされた感はほぼないというか、わずか数年の間にこれだけの仕事量をこなす富野監督…それとは別にオリジナル新作テレビシリーズ『戦闘メカ ザブングル』 (1982~)が1982年2月――劇場版『ガンダム』3作目の1か月前で『イデオン』約半年前という時期からオンエアされるのです!

「ば、化け物か…?」(CV永井一郎)
で、『接触篇』『発動篇』2本に分けて怒涛の連続公開のフィナーレ、『イデオン』劇場版はといえば……。

(以下ネタバレ)
やっぱりイデが発動して全員死んじゃったよ!
テレビの最終回は、打ち切られた腹いせで全員殺した訳じゃなかったのか!
でも起きたことは同じだけど、そこに至るまでの過程と、死んだ人たちを一人一人丁寧に拾っていくからめちゃくちゃイイ終わり方じゃん!…って一緒に見た友達に言うと、みんな「お前は頭がおかしい」と口を揃えて罵られました。

そのときは何がいいかをうまく説明できなかったけど、今でもそう思ってます。
昔に比べて同じ意見の持ち主が周りにいっぱいいるのがせめてもの救いです。
数年後の1984年に公開される『デューン/砂の惑星』(1984)とかもね。

『伝説巨神イデオン 接触篇/発動篇』(1982) 上映時間・各1時間24分&1時間39分/日本
総監督・原作:富野喜幸(※現・富野由悠季)
CV:塩谷翼、田中秀幸、戸田恵子、白石冬美、井上遙 他

『ガンダム』の続きを期待するファンの希望を叩きのめす『イデオン』は、「俺たちへの挑戦状だ!」と燃えたった樋口真嗣。またしてもぶった切られるが擁護する!【『伝説巨神イデオン』】_4

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https://sunrise-world.net/
イデオン公式  http://www.ideon.jp/

打ち切られたテレビシリーズをまとめた『接触篇』と、その後を描いた『発動篇』の2本だてで同時公開された劇場版。遠宇宙の植民星に進出した人類は、自らの双子ともいうべき異星人バッフ・クランと接触、誤解から争いが始まり、コスモ(CV:塩谷翼)ら少年少女たちの一団は、遺跡から発掘された宇宙船と巨大ロボット<イデオン>で宇宙へ逃れる。やがて闘いは全面戦争へ発展し、ナゾの無限エネルギー<イデ>の発動を呼ぶ…。
巨大さと物量では類を見ない迫力の戦闘シーン、心の邂逅とすれ違いを残酷なまでに際立たせる人間描写、美麗な作画とスケール感のある音楽、そして圧倒的なラスト。ある人はなんじゃこりゃと言い、ある人は人生最高傑作と呼ぶ、富野アニメの最高峰。