成長期におすすめのいろんな体の動かし方

スポーツドクターとして女性アスリートのサポートをしているため、成長期の子どもの運動について相談されることがよくあります。

厳しいトレーニングで生理が止まるとか、18歳になっても初潮がこないといった状態は、必要なエネルギー量が足りていないためにエストロゲンの分泌が十分ではないというサインととらえ、食生活を見直す、そして練習内容など消費されるエネルギー量を見直すといった対策をして、きちんと生理がくる状態で運動を続けることが大切です。

では、もっと幼いときからスポーツに取り組むことについては、どう考えればいい?無理のない運動ってどれくらい?そんな疑問について、少しお話ししてみたいと思います。

思春期よりも前、からだが成長しつつある子どもの運動に関していえば、現代では、過度な運動よりも、運動量の少なさのほうが問題になることが多いと思います。

もともとは、家の外でからだを動かして遊ぶことが、知らないうちにからだの成長にプラスになっていたわけですが、今や、遊びといえばスマホやタブレットがメインという子どもが少なくありません。

意識的にからだを動かさなければ動かさずに済んでしまうので、「6歳以上の子どもは、1日に1時間程度の運動が必要」と、あえて運動が推奨されるようになりました。

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では、実際にどんな運動をすると良いのでしょうか。

子どもが好きで、からだを動かしたくなるようなものであればなんでもいいのですが、一つ大事なことがあります。それは、特に幼少期には、できるだけ多種のからだの動きを経験させたい、ということです。

というのも、運動神経を含む神経系統は、5歳から6歳ぐらいまでにぐっと伸び、その年代で成人の約8割の状態にまで成長することが知られているからです。

少し補足すると、子どものからだは、すべての部位や働きが同じスピードやリズムで成長していくわけではなく、器官や機能によって、成長の速度やパターンが違っていることが知られています。

生まれてから成熟するまでの発育量を100としたときに、各年齢における発育の割合を段階的に示したグラフは「スキャモンの発育曲線」(図4-1)として、ジュニアスポーツの世界ではよく知られています。

ヒトの発育のパターンは「神経系型」「リンパ系型(免疫をつかさどる)」「一般型(筋肉や骨格)」「生殖器型」の4パターンに分けられていて、それぞれ異なるカーブを描きながら成熟していきます。

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図4-1 スキャモンの発育曲線。『娘と話す、からだ・こころ・性のこと』より

この知見をふまえると、運動神経が急激に発達するのは5歳、6歳ぐらいまでであり、この年代には何か特定の種類の動きに集中させるよりも、走る、投げる、跳ぶ、登る、泳ぐ、ひねる、さかさまになる、飛び降りる、転がるなど、ありとあらゆるからだの動きを経験させることが望ましいわけです。

さらに5、6年経って、10歳前後になると、動作の習得が得意な時期になります。いわば何かの「まね」をする動作です。はじめてチャレンジするような動きでも、一度お手本を見せると、パッとできてしまったりするのがこの年代です。何かの「まね」から、動作を身につけていくことも多いことでしょう。

つまり、子どもの身体的な成長には、さまざまなからだの使い方を経験させる機会、正しいからだの動かし方を「まね」する機会が必要だといえます。

そして、もう一つ大事なアドバイスは、育ち盛りの子どもが運動量に対して、適切なエネルギー量を摂取できているか、ここを気にしていただきたいのです。

成長期はからだが育つ、そのためにもエネルギーを消費している時期ですから、しっかりと運動をして、しっかりとエネルギーを摂る。成長期の運動で大事なことは、これにつきるのではないでしょうか。