ヨーロッパ攻略の悲願を託された「インナー」
ユニクロは2001年にイギリスに出店して店舗数を拡大したものの、恒常的な赤字から抜け出すことができずに撤退した過去がある。よって、ファッションの本場ヨーロッパで勢力を拡大することは、ユニクロの悲願だったとも言える。
しかし、昨年新たにユニクロが発表したその攻め方は、慎重そのものでユニクロらしい。
2022年10月13日、ファーストリテーリングはヨーロッパでの事業拡大を目指した新戦略を発表したのだが、その中で、ヨーロッパの市場をブランド間での競争が激しく、消費者の服に対する目も厳しいと分析。その市場を攻め込む戦術として第一に掲げたのが、エアリズムやヒートテックなど生活に密着した商品の拡充、顧客層の拡大だった。
ファッションとえば、華やかな外着が注目されがちだが、ユニクロはあくまでインナーでのシェア拡大を狙ったのだ。
ガスの備蓄を高めたヨーロッパ
ヨーロッパはロシア産のエネルギー供給が途絶えて2度目の冬を迎える。
ただし、各国ともにガス備蓄は高水準で、エネルギー価格は低下している。パイプラインを経由したノルウェーがヨーロッパ最大の供給国となるなど、ロシアへの依存度は極めて低くなった。
したがって、今年の冬は、ユニクロに2022年のような神風が吹くことはないだろう。
ユニクロが2024年8月期に大幅な増収を見込んでいる背景として、今年の上半期と異なり、中国事業がゼロコロナの影響をまったく受けないことを見越しているのことがあるだろう。2023年8月期上半期は大幅な減収に見舞われていた。その反動増があるはずだ。
今期の決算で大注目となるのが、ヨーロッパとアメリカだ。エネルギー不足という突発的な要因が取り除かれてもなお、増収増益を成し遂げられるかがポイントとなる。
ヨーロッパやアメリカは、インフレで節約志向が高まった。機能的な服が必要だという意識が高まれば、異常気象の影響も相まってユニクロの業績は拡大するだろう。
同社は2024年8月期の売上高を3兆500億円と予想。2期連続の2ケタ増収を見込んでいるが、2023年8月期の業績はその分水嶺になったように見える。
取材・文/不破聡