自分自身が持つ先入観を知る
日頃の人付き合いのみならず、人生を左右するような重要な試験や面接、プレゼンテーションの場面において、私たちの先入観が脅威となる場合があります。
本来であれば「うまくできる」ことなのに、気づかないうちに、先入観が、それを妨害してしまうこともありえるとすれば、なんとも悔しいですし、恐ろしいことでもあります。
逆に、自分自身が持つさまざまな先入観について知っていれば、失敗や後悔を減らすことにつながります。
ステレオタイプやバイアスにも利点はあります。それらがあることにより、私たちは認知の処理のために使うエネルギーを減らすことができ、なおかつ最速で考えて行動できる、いわば効率化のための機能なのです。
たとえば、あなたがスーパーに勤務していたら「店内でソワソワしている人は万引きの可能性がある」といった先入観によって、防犯対策を強化できるかもしれません。
あるいは、就職面接前に「私ならきっとできる!」という思い込みがあれば、少しはポジティブな気分で、自分の伝えたいことを面接の場でアピールできます。
困るのはそれが逆に働くときです。「ソワソワしているお客様がいるけれど、子連れの人だから、万引きなんて、するわけがない」と、「親だから」「子どもと一緒だから」などという理由で、悪いことをするはずがない、という先入観があれば、防犯の妨げになることもあります。
また、自分に対しての「私は一流大学出身ではないから、企業に採用されるのは無理だ」などという思い込みは、自らの選択肢や可能性を制限し、根拠のないネガティブな結果に想像力を占拠されてしまうでしょう。
それによって、諦めや絶望といった枠の中だけで、重要な決断をくだすこととなり、それが自信のない態度にも出てしまい、自らチャンスを退け、大きな損失になりかねません。
「先入観」をなくす言葉
こうしたことからもわかるように、私たちの思い込みは、物事の結果を大きく変える影響力があります。
しかしその影響を受けて、最終的に物事の判断を調整できるのは、ほかでもない自分自身の意思です。
偏った考え方や、常識や一般論といわれる尺度に判断を惑わされそうなときは、ほんの1秒ほどの時間で「いや待てよ」と、自分に問いかけてみましょう。
それだけのワンアクションでも、思い込みによる安易な即決をとどまらせ、より理論的で、柔軟な考え方ができる自分へと、スイッチを切り替えることが可能です。
まずは、あなたにとって、身近なステレオタイプやバイアスがあるかどうか、観察してみましょう。「外国人は皆、自己主張が強くて苦手」と思っているとすれば、「待てよ。日本人だっていろいろなタイプの人がいるじゃないか。だとすれば、自分と気の合う外国人だってきっといるはずだ」と自然に考えることができるのです。
もしも、「40歳を過ぎたら結婚は難しい」という先入観を持つ人がいるとすれば、その信ぴょう性を疑い、根拠を探し、「本当に難しいのか? いや待てよ」と自分に問いかけてみましょう。
そして、「結婚に年齢は関係ない」「人それぞれだ」「決めるのは自分だ」といった、あなたらしい考え方を、言葉として置き換えられれば、その時点で、すでに先入観による脅威は去ったようなものです。