「話す力」よりも「聴く力」

TBSに在籍した27年間では、ナレーションなどのアナウンス業だけでなく管理職や新人採用にも携わってきた堀井さん。アナウンサー時代は情報を一方的に伝えるだけでなくMCやゲストの話を聴く仕事を多くこなし、管理職時代はその培ってきた「聴く力」がよりどころとなったという。そんな堀井さんのルーツは秋田県で「大家族に囲まれた幼少期」を過ごした。思い返せばその頃から“聴き役”だったとか。

「田舎の昔懐かしい大家族というか、親戚同士の集まりは広いお座敷の上座の方におじさんとかが座って、お母さんや女性たちはお給仕して後ろの方で集まって食べるという感じの環境で育ちました。今考えるとおかしな話ではありますが、母の教えや周りの空気もあって“女子が中央に立って喋ってはいけない”という雰囲気があって、どちらかというと幼い頃から聴き役というかキャッチャー側でした。

だから人前で喋ることは得意ではなかったですね。だけど母は声に出して本を読むことの大事さを教えてくれました。毎朝、母からの言いつけで国語の教科書の音読はしていたので、その経験から間の取り方や息継ぎは自然と学んでいたように思います」

堀井美香氏
堀井美香氏
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「地元では公務員になるのが一番いい道だ」と両親に教えられたと言うが、そんな中でアナウンサーという道を選んだ堀井さん。幼い頃からの音読経験だけでなく、大学の進路担当の先生からのこんな声がけがきっかけだったとか。

「大学の進路の資料を出しに行った時に担当の方が『アナウンサーコースを受けてみたら?』とマスコミ講座のチラシを渡してくれたんです。私に対して特別にってわけでもなくて、手当たりしだいにばら撒いてただけなのかもしれないんですけど(笑)。

アナウンサーだなんて、自分とは住む世界が違うとは思いましたが、そのコースでは面接の練習もあったので、一般企業の入社試験にも役立つだろうと思って始めました。でもそこで切磋琢磨するうちに本気でアナウンサーになりたいと思うようになったんです」

堀井さんがTBSに入社した1995年は、まさに女子アナブーム真っ只中。『ねる様の踏み絵』ではとんねるずのアシスタント、『王様のブランチ』では初代進行アナとして出演するなど、瞬く間に人気アナに。