障がい児だとわかったとたんに夫の態度が変わり…
藤井被告は蒼天くんを授かる前に5度の流産と死産を経験しており、夫から「まわりの友人はみんな子どもがいるのに、俺はいつになったら自分の子どもを抱けるんだ。お前と結婚した俺は不幸だ」「障がい者なんか産んだら許さんけえよ」など、夫から心ない言葉を投げ続けられたという。
その後、夫に離婚を切り出されたことがきっかけで、藤井被告は犯行に及んでいる。
障がい児のいる家庭の離婚率は健常児世帯の6倍といわれており、その原因に夫が自身の子供の障がいを受け入れられないケースは少なからず存在する。
関東在住の利香さん(30代・仮名)は、長男に障がいがあることがわかり、離婚にいたった。
「私の夫も当初は受け入れようと必死でしたが、最終的にはそれが難しいことがわかると家に帰ってこなくなり、離婚を迫られました。それまでは専業主婦でしたが、離婚後は働かざるを得なくなり、福祉関係の仕事をしながら、子どもを育てています」
藤井被告の夫は2歳から育児に関わらなくなり、藤井被告はパートで働きながらひとりで家事、育児を担っていたという。しかし、幼稚園からの幼馴染だった夫と21歳で結婚した当初は幸せだったという話も法廷では語られた。
「私と一緒ですね。夫は結婚前から子どもの障がいわかるまでは、毎年誕生日に花をくれたりと優しかったですよ。でも子どもが生まれて2歳ぐらいから周囲の子どもと違うなと感じてきたようで。
そこからは徐々に子ども、そして私とも距離を置くようになっていきました。
私も必死に夫との関係を修復しようとしたし、いっそ子どもがいないほうがと思い、施設に預けようかと悩んだことも一度や二度ではありません。
夫に離婚を切り出された背景には同情しますが子供を殺す理由には絶対ならない。育児負担はあったにしろ、藤井被告本人の未熟さもあったのではないでしょうか」(利香さん)
同じ境遇にある母親たちから同情の声が多いのは、障がい児育児は定型発達児と比較にならないほどの負担や、その将来への不安が大きいことを知ってるからだ。
障がい児育児に疲弊し、困窮する中では、みずから社会や行政に助けを求める声をあげるのが非常に難しくなる。だからこそ障がい児育児も、一般の子育てと同じ、いやそれ以上に家族や社会の協力が必要不可欠になってくる。
10月3日におこなわれた結審でも、藤井被告は裁判官から「夫との間で解決すべき問題に息子を巻きこんだ」と指摘されていた。司法関係者によると「現状、藤井被告は控訴はしない意向」だという。
取材・文/中西美穂
集英社オンライン編集部ニュース班