再会を心待ちにしていた地元の人々
震災から12年半が経過するなかで、かつてモビリアの名で愛されていたキャンプ場のリニューアルオープンは、地元の人々にとっても悲願と言える出来事だ。オープン初日のプレスイベントに参加した筆者は、幸運にも地元に住む方々の声を聞くことができた。
広田半島に住む佐々木恵子さんと千田礼子さんは「これまで工事中で閉まっていたんですけど、今日は開いていたんで、上がってきちゃいました」と、開店前の陸前高田キャンプフィールドを笑顔で覗き込んでいた。2人は周辺の山道を散歩コースとしており、これまでも頻繁に様子をうかがいにきていたという。
山道を降りた場所にある佐々木さんの自宅は、震災当時、津波の被害に遭った。家族は無事だったものの、家は屋根が残っただけで、そのほかは流されてしまった。そのため、モビリアに建てられた仮設住宅で4年間生活していたという。
「このあたりは道路が切断されて、食べ物もなくなってしまって……。家族5人で暮らすのに、もうお米もわずかで、乾麺もなくなって、お店もない。どうやって生きようと思っていたら、自衛隊のヘリコプターが飛んできて。走って追いかけたら、ここに止まったんです。それを見て、涙が止まらなかった。『これで生きられる』って。だから、ここは忘れられない場所なんです」(佐々木さん)
一方の千田さんにとっても、このオートキャンプ場は思い出深い場所で、その再開を心待ちにしていたそうだ。
「私は、震災前は(モビリアにあった)キャビンのお掃除にも入っていて。何人かで交代しながら、働かせてもらいました。そういう意味でも、ここは思い出が詰まった場所。あの繁盛していたキャンプ場がまた新しく始まるっていうので、本当にうれしいです」(千田さん)