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長く愛された「モビリア」をリニューアル

2023年9月23日、東北地方に1つのキャンプ場がオープンした。

名前は「スノーピーク陸前高田キャンプフィールド」(以下、陸前高田キャンプフィールド)。その名からもわかるとおり、ここは高品質なキャンプギアで多くのフォロワーを獲得する国内屈指のアウトドア製品メーカー「スノーピーク(Snow Peak)」が運営する新しいキャンプ場だ。

フィールド内には毎年秋に開催される「三陸花火」を見下ろせる展望台もある
フィールド内には毎年秋に開催される「三陸花火」を見下ろせる展望台もある
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スノーピークは現在、ギア販売のためのストアだけでなく、実際にキャンプを楽しめる直営のキャンプフィールドを全国各地に展開している。

本社(新潟県・三条市)併設の「スノーピーク・ヘッドクォーターズ・キャンプフィールド」をはじめ、直近では2023年7月に「スノーピーク白河高原キャンプフィールド」を福島県に開業。その土地特有の利点を活かしながら、キャンパーはもちろん、地元民の交流の場として、これまでに計9拠点(陸前高田を含む)をオープンしてきた。

そして今回、新たな開業エリアとして選ばれたのが、岩手県の三陸沿岸部に位置する陸前高田市だ。

その地名を聞いて、2011年3月に発生した東日本大震災を思い浮かべる人はまだまだ多いだろう。同震災の津波により、陸前高田市は死者数1,606人、行方不明者数202人、家屋倒壊数4,047棟という甚大な被害を受けている(令和5年3月31日時点)。

震災直後、2011年3月20日に撮影されたキャンプフィールド周辺の様子
震災直後、2011年3月20日に撮影されたキャンプフィールド周辺の様子

陸前高田キャンプフィールドが位置するのは、もともと「モビリア」という県営のオートキャンプ場があった場所だ。モビリアは平成11年に広田半島に開設されてから、遠方からも多くのキャンパーが訪れる大規模なキャンプ場として賑わいを見せていた(2010年度の来場者数は年間約1万3000人を記録)。

しかし東日本大震災津波直後は避難所として稼働。以降は168棟の仮設住宅が置かれる、陸前高田市の防災拠点として機能していた。ここには地元の人々だけでなく、復興工事関係者や警備員なども宿泊し、現場作業に当たっていたという。

震災後、地元民はモビリア跡地にできた仮設住宅で生活していた
震災後、地元民はモビリア跡地にできた仮設住宅で生活していた

そして、需要の減少や施設の老朽化から2018年に宿泊施設としての利用を休止。2020年3月には仮設住宅が閉鎖され、同10月には設置されていたすべての仮設住宅が撤去された。