多様化するニーズを反映
モビリアとしての営業が終了したタイミングで、岩手県は改修に向けて同施設の存続を検討。しかし、キャンプ場として、そのまま再開させてよいものか、そして現在の市場ニーズに合っているのかどうかを細かくリサーチした。
岩手県の商工労働観光部 観光・プロモーション室の木登恵一(きと・けいいち)課長は、リニューアルプロジェクトに着手した当時について振り返る。
「観光・プロモーション室のミッションとしては、『地域経済の活性化』が第一に挙げられます。『施設を新しく作って、おしまい』ではなく、それが地域に根差し、しっかりとお金が落ちて、経済が活性化していくものでなければ、観光事業としてやる必要がない。なので、ただ施設を改修するだけでなく、すべてをゼロベースで検討していくことにしました。
それを考えていくうえで、行政だけの視点で新しい施設をつくって『はい、どうぞ』とオープンしても、先は見えているなと。なので、経験やノウハウを持つ民間企業の知恵を借りて、一緒に作り上げることにしたんです」(木登課長)
どうすれば持続性があり、収益性の高いキャンプ場がつくれるのか。そのために岩手県は自分たちの視点だけではなく、アウトドア関連企業やキャンプ協会などを対象にサウンディング(事業の検討を進展させるための情報収集)を繰り返して、今のキャンプのニーズを吸い上げることにした。
コロナ禍でアウトドア需要が高まったことで、そのニーズも多様化している。近年はテントの大型化やペットの同伴、手軽なグランピングが人気を博すなど、キャンプのスタイルも多岐に渡っている。一方でリニューアル前のモビリアは、それらのニーズに即しているとは言いがたい状況だった。
たとえば、キャンプ場リニューアルにあたってどうしても盛り込みたかったのが「フリーサイト」の部分。陸前高田キャンプフィールドには区画化されていない開けたフリーサイトが用意されているが、これはモビリア時代には存在しなかったものだ。
昨今は、たとえばフリーサイトで大きな2ルームテントを設営したり、大人数のグループでキャンプを楽しんだりといったスタイルも増えている。これに応えるために、また「さまざまなユーザーが交流できる場」を設けるために、岩手県としてフリーサイトをぜひとも用意したかったという。
このように新しくキャンプ施設を整備・運営するうえで、さまざまな企業や協会、関係者の意見をヒアリングしながら、2022年にプロポーザル方式でスノーピークの参画が決まった。これに対し、木登課長は「県の目指すビジョンと、スノーピークの持つ世界観がマッチした」とする。
では、スノーピークが持つ世界観とは、一体どのようなものなのだろうか。