「おじさんが親しんだ80年代の映画」が短かっただけ?

下記の折れ線グラフは、1980年から2022年までの各年に日本で公開された映画の中から、「国内興行収入・配給収入(※1)上位10作品」の平均上映時間の推移(オレンジ)と「国内興行収入20億円以上(※2)の洋画」の平均上映時間の推移(青)を示したものである。要は、オレンジは洋画と邦画あわせての人気作、青は洋画の人気作だ。

映画の平均上映時間の推移/1980〜2022年

「近年の映画が長くなった」と感じる中高年とピンとこない若者…映画の平均上映時間は20年で13分長くなっているのに、世代によって感じ方に違いが生じるのはなぜ?_3
・一般社団法人日本映画製作者連盟による興行収入・配給収入ランキング、および「allcinema」掲載の上映時間データなどを元に筆者作成
・長編と中短編の複数本立ての場合は、長編の上映時間のみをカウント。長編2本立ての場合はそれぞれの上映時間をカウント。中短編のみの複数本立ては除外した
・新型コロナ感染拡大の影響でシニア層の観客が激減した2020年と2021年は参考値(洋画のランクイン数が異常に少ない)
(※1)2000年以降は興行収入(チケットの全売上)、1999年以前は配給収入(興行収入から映画館の取り分を引いたもの)が発表されている。配給収入は興行収入のおおむね50%程度
(※2)「興行収入20億円以上」に相当する「配給収入10億円以上」の作品を該当作とした

ただ、正直言ってどちらのグラフからも「昨今、上映時間が劇的に伸びている」とは言い切れない。年による振れ幅も大きい上に、近年の興行収入ランキングで特に存在感を増している国内外のファミリー向けアニメ作品は、むしろ尺が短い部類に入るだろう。

とはいえ、これだけは言えないだろうか。洋画(青)の1982〜87年あたりの配給収入上位作品に限っては、他の時期に比べて平均上映時間がやや短めである、と。

この時期の平均上映時間を下げている洋画を、いくつか拾ってみる。

まず目につくのが、当時の小中学生男子(筆者も該当する)に大人気だったジャッキー・チェン主演作とシルベスター・スタローン主演作だ。

「近年の映画が長くなった」と感じる中高年とピンとこない若者…映画の平均上映時間は20年で13分長くなっているのに、世代によって感じ方に違いが生じるのはなぜ?_4
『プロジェクトA』
Bru-ray/3,122円税込/ツイン
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たとえば、ジャッキー主演作の『プロジェクトA』(1984/国内興行における集計年、以下同)は1時間45分、『スパルタンX』(1985)は1時間48分、『ポリス・ストーリー』(1986)は1時間46分、『プロジェクトA2 史上最大の標的』(1987)は1時間45分、『七福星』(1988)は1時間30分である。興収上位作以外でも、『プロテクター』(1985)は1時間35分、『ファースト・ミッション』(1985年)は1時間38分、『サンダーアーム/龍兄虎弟』(1986年)は1時間38分と、軒並み短めだ。

一方、スタローン主演作では『ロッキー3』(1982年)が1時間39分、『ランボー』(1983)が1時間34分、『ランボー 怒りの脱出』(1985年)が1時間36分、『ロッキー4』(1985)が1時間31分、『コブラ』(1985)が1時間25分、『オーバー・ザ・トップ』(1987)が1時間34分と、やはり短い。