上層部と討論できるようにビジネス書をたくさん読んだ

──1999年にSV(スーパーバイザー)へ、そして2003年には営業業務の総括を任されるようになったとのことですが、管理職になったことでどんな課題に直面しましたか。

私は2003年から本部の仕事に携わるようになりました。当時は43歳でしたが、今まで現場しかやってこなかったため、商品や人事に関する問い合わせに初めは全く答えられませんでした。

それでも本部で仕事をする以上、上層部のGM(総括マネジャー)クラスと討論できるように、日経新聞を読んだりマーケティングや人事の本をたくさん読んだりして、ビジネスの知識を身につけることに必死でしたね。
バイブルとしていたのは『サービス・マネジメント―統合的アプローチ』というビジネス書でした。その時に読んだ本のうちの一部は、本部に図書館として置き、誰もが読めるようにしています。

デニーズ本社の書庫には小松文庫として読了した本が保管され、社員が自由に借りられる。
デニーズ本社の書庫には小松文庫として読了した本が保管され、社員が自由に借りられる。
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こうして、ビジネスマンとしての知見を蓄えながら、懸命に業務に励み、結果を上げられる努力を積み重ねてきました。

その結果、2009年には商品開発部長GM(総括マネジャー)、2012年には執行役員商品開発部長にまで昇進することができたのです。

味覚を鍛えるために外食を日課に。30kg太っても......

──営業から商品開発へ移って意識していたのは何かありますか? また2014年に取締役、2017年に代表取締役社長へと昇進したなかで、現場で働いていた時と経営層の立場でどのようなマインドの変化があったのでしょうか。

商品開発においてデニーズが他社と異なるのは、仕入れや調達を担当する商品部と、メニューの開発を行う商品開発部に分かれていることです。

新規商品を作るために市場調査やお客様の消費動向などをリサーチするほか、ハンバーグやステーキといった各メニューの方向性や品揃えと価格、粗利の部分などを考えるのが主な役割でした。ですが、私は営業畑の出身ということもあり、まったく自信がありませんでした。

なので、まずは料理を勉強するために、有名シェフが料理を振るう名店からリーズナブルな町中華まで、いろんなジャンルのお店を食べ歩くことを毎日の日課にしました。気づいたら30kgも太ってしまいましたが、その甲斐あって、さまざまな食体験ができましたので、商品開発にも活かせるようになっていきました。

マインドに関しては、現場のときと大きく変えるようなことはしていませんでした。ただひとつ言えるのは、役職が上がるにつれて、社員や会社のことをより一層考えるようになったこと。責任の重さというか、自分がやるべきこと、果たすべきことを意識し、会社を成長させていくために、社員やお客様へ真摯に向き合うことを大切にしていました。

#2へつづく

#2 50年間で3兆円から24兆円に成長した外食産業の中で「デニーズ」は2度の大量閉店の危機をどう乗り越えたのか?《デニーズ50周年・社長インタビュー》

取材・文/古田島大介 撮影/Keiko Hamada