井端が憧れる現役選手

余談になるが、いまや日本プロ野球を代表するスラッガーで、侍JAPANの一員として2021年の東京五輪で金メダルを獲得した    オリックス(現・レッドソックス)の吉田正尚選手。彼は、私にとって憧れの選手だ。あの力強いスイングには、とても惹きつけられる。

侍JAPAN新監督・井端弘和が憧れる意外な現役日本人選手…「素直な気持ちを言えば、もっと大きな野球をやってみたかった」_3
現役最強打者と呼び声高い、MLBでプレーする吉田正尚選手 写真:AP/アフロ
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身長173センチは、私とほぼ変わらない。そこにウェートトレーニングなどで厚みをつけて、ああいうゴツい身体を作り上げた。私の場合はプレーのスピードを意識していたので、あまり身体を大きくするとマイナスの要素が出て来ると思い、ウェートトレーニングはそこまで力を入れてやっていなかった。彼はパワーで勝負するという意思があったのだろう。そこは二遊間を守る内野手と、打ってナンボの外野手で、求められているものの違いがあるから、当然アプローチも違う。

それでも、私が目指してみたかった選手のイメージ像が彼にはある。あれくらいの身長で首位打者を取る選手というのは過去にもいたが、30本近いホームランを打つ選手というのは、なかなかいなかった。

身長の数字だけを見れば、西武の大砲・中村剛也選手や山川穂高選手もそんなに背が高いわけではない。ただ、彼らを見てもあまり小柄とは思わないだろう。あの体重100キロを超えるアンコ型の体型は、むしろ巨漢に映る。あえて探せば、かつてパ・リーグで何度もホームラン王を獲得した門田博光さん(元・南海)が170センチしかなかった。門田さんも、フルスイングが代名詞だった。

吉田選手はユニフォームを着てプレーする姿を見ると大きく感じるが、侍JAPANで初めて会った時、「こんなに小さいんだ」と驚いた。実際、オリックスで3、4番のコンビを組んだ190センチ近い巨漢の杉本裕太郎選手と並ぶと、頭一つ違う。それでも、同じように大きな打球を飛ばしている。

「俺もあれくらい鍛え上げていたら、ああいう野球が出来たのかな?」と想像したりもしてしまうのだ。

#2 【侍JAPAN新監督】現役時代、打率を気にしたことのない井端弘和が絶対に妥協しなかった数字

『野球観 ~勝負をわける頭脳と感性~』(日本文芸社)
井端弘和
侍JAPAN新監督・井端弘和が憧れる意外な現役日本人選手…「素直な気持ちを言えば、もっと大きな野球をやってみたかった」_4
2022年6月2日
1760円
192ページ
ISBN:978-4-537-21994-4
東京五輪で金メダルを獲得した野球日本代表“侍ジャパン”の内野守備・走塁コーチ、井端弘和。現役時代は荒木雅博と「アライバコンビ」を組み、現役引退後は巨人・高橋由伸監督の下でコーチを経験。現在は社会人野球の指導を行うなど「育成手腕」が高く評価されている。そんな野球界が誇る“名参謀”が、“コーチ”の重要性、存在意義について語る一冊。
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