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「俺だって、狙ったら打てるよ」

〝井端弘和〟という名前を聞いて、野球ファンの皆さんはどんなイメージを抱くだろうか?

失点を最小限に食い止める堅実な守備。状況に応じて逆方向を狙ったり、簡単にはアウトにならないしぶといバッティング。前後の打者をつなぐ、バントや進塁打といった意味のあるアウト……。ひっくるめて言えば、それは「スモール・ベースボール」と呼ばれるもの。だから私のことをスモールベースボールの推進者であり、信奉者だと思っている人は多いはずだ。

たしかに現役時代の私がそういうプレーを得意としていたのは間違いない。いずれも長い時間を掛けて練習し身に付けてきた技術なので、自分なりに自信も持っている。

侍JAPAN新監督・井端弘和が憧れる意外な現役日本人選手…「素直な気持ちを言えば、もっと大きな野球をやってみたかった」_1
今年4月、U-12ワールドカップに向け意気込みを語る井端監督 写真/共同通信
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しかし、じゃあ私がスモール・ベースボールを好きかと聞かれたら、必ずしも「はい」とは答えられない。素直な気持ちを言えば、もっと〝大きな野球〟をやってみたかった。

ホームランを打とうと思えば、「俺だって、狙ったら打てるよ」という自信もあった。

だけど、現役時代に同じチームでプレーした高橋由伸選手や福留孝介選手のように、潜在的にシーズン本以上打てるような打者は、少々タイミングを崩されても、とりあえずバットの芯で捉えて打球が上がればホームランになる。それならストレートを待ちながら、変化球を打ちにいくことも出来るはずだ。私の場合は、彼らとは違って、フライになったらなかなか柵越えはしない。打つならライナー性の打球。そのためにはミートポイントを一カ所に絞って、完璧なタイミングで捉えなくてはならない。