就農には多額の借金が必要な場合も

「ミズニゴールに興味を持ってくださる方は若い人が多いですけれど、農業全体で見れば若い人はごくわずかです。長く農家をやっている人と話をすると、『自分の子どもには継がせたくない』と言っていますね」

農家の人手不足について尋ねると、日吉さんはそう切り返した。

「手間もかかるし、金銭的な面も大変です。農業は設備投資の額が大きくて、新規就農だと多額の借金を抱えてのスタートになります。それで、JAからローンでお金を借りて、JAから農機具や種、農薬、肥料を買って、JAが指定した金額で農作物を納めて…とやっていくと、まるでJAに人生を決められているみたいになってしまいます」

日本農業の「構造的問題」にロボティクスのチカラで挑戦。農家の重労働を削減するスマートデバイス「ミズニゴール」とは?_2
日常的に自営農業に従事している人口を示すグラフ。ここ数年で見ても右肩下がりなのがわかる(出典:農林水産省「農業労働力に関する統計」より作図)

JAには、農業経営のアドバイスを受けられたり、作物を安定して買い取ってもらえたりといった数々の恩恵がある。決してJAを非難するつもりはない。しかし、日吉さんのいうように、こうしてレールを敷かれた農業のやり方に、夢を抱きにくい人もいるだろう。

「JAを使わずに直販でやる方法もあります。無農薬栽培なら、安全・安心なお米という価値を付加して販売できる。知り合いには、年間契約で顧客を抱えている農家さんもいます」

しかし、無農薬での栽培は、雑草との戦いだ。かなり多くの時間を雑草の処理に費やすことになる。多くの人は、その手間をかけられないため無農薬栽培を断念してしまう。

そこに一石を投じるのがミズニゴールというわけだ。除草の手間を大幅に削減できるようになれば、米の無農薬栽培がしやすくなる。直売で利益を上げることができれば、農業で夢を見られる人も増えていくだろう。

農業で夢が見られるようになれば、新たに農業を始める人も増えていくだろう。自分の子どもに継がせたい、あるいは親の農地を継ぎたいという人も増えていくかもしれない。それが就農人口の減少を食い止める糸口になるのではないだろうか。