「神石」を求めて…火を起こすために石を探す!?
最初にやるのは材料集めだ。僕らが挑戦する「キリモミ式」火起こしは、「ヒモギリ式」や「マイギリ式」など、数ある発火法の中でも、最もシンプルで原始的なやり方の一つだ。木の板の上で木の棒を回転させ、摩擦熱によって火を起こす。
必要なのは次の3つだけ。
・火きり棒(手で挟んで回転させるまっすぐな木の棒)
・火きり板(火きり棒の回転を受ける木の板)
・火口(ホクチ、摩擦の熱で生まれた火種を包んで炎にするための繊維の塊)
ただし、どんな種類の木がいいのか、自然の中でどうやって板を手に入れたらいいのかなど、わからないことがたくさんあった。すべて試してみるしかない。
いざ、木を探しに行こうかと思ったそのとき、切るための道具がないことに気づいた。そこで、ひとまずナイフ代わりに使えそうな石を求めて、河原へ降りることにした。
初めのうちは、よく切れそうな薄くて鋭い石や、先端が尖った石など、そのまま使えそうな形のものを拾っていた。ところが、使えない石を放り投げているうちに、割れると鋭いエッジが簡単にできることに気がついた。石器の誕生である。
自ら道具が作れることに気づいた僕らは、わずか20分ほどで、両手いっぱいの石のナイフを手に入れることができた。
これらの石器の質にはレベルがある。普通のものは、尖ったエッジ部分の耐久性が低く、木を数回削っただけで欠けてしまう。石器は消耗品なのだ。そんな中、エッジが鋭いにも関わらず、硬くて壊れにくい一級品の石器がある。僕らは自然とこれを「神石」と呼ぶようになった。
しかし、「神石」も見た目は普通の石なので、使い終わってついそこらへんの地面に置いておくと、周囲に溶け込んで他の石と見分けがつかなくなる。「あれ、神石は……?」こうして神隠しにあったものが、一体いくつあっただろうか。その度に落ち込むのだが、心のどこかで「所詮は石」と思っているからなのか、神石に対する雑な扱いは一向に改まらないのであった。