衣装代に数十万円をかけるダンサーも
コロナ禍前まではただのパレードではなく、コンテスト形式の真剣勝負の場として、全国各地の約20団体ものサンバチームが集結していた「浅草サンバカーニバル」。
1部となるS1リーグと、2部となるS2リーグに分かれてパレードを行い、例年はダンスや衣装だけでなく全体の調和を評価基準に競い合い、モバイル投票により各種特別賞が、審査員により順位が決まる。そして、S2リーグの優勝チームとS1リーグの最下位チームが入れ替わって翌年新たな本番を迎えるシステムとなっていたが、今年は規模縮小ということで、パレードだけの開催となった。
参加チームは関東の大学生とそのOBやOG中心に構成された巨大サークルもあれば、東京、名古屋、鹿児島の3都市のサンバ好きの大人たちで構成されたものなどさまざまで、今回は両リーグ各8チームに加え、小学生のバンド隊も含めた総勢18団体、約3000人が浅草の雷門通りを練り歩いた。
サンバといえば、露出度の高い衣装と豪華な羽根を背負って踊る姿をイメージする人が多いかと思うが、このパレードの花形であるダンサーを「パシスタ」という。
そして、そのパシスタなどからさらに選ばれたトップダンサーが「ハイーニャ・ダ・バテリア」。これは「バテリア」と呼ばれる打楽器隊を先導してパレードを盛り上げる、チームの顔と呼べるポジションだ。
今回はパシスタを務める女性たちの素顔に迫った。
まず取り上げるのは2017年に誕生したばかりだという都内のサンバチーム「G.R.E.S.アカデミコス ダ グローリア」。このチームのパシスタであるエリさんは、ふだんは都内の企業で広報を担当する会社員。3カ国語を扱い、年に5回は海外出張もするというバリキャリだ。
「サンバ歴は7年で、始めたきっかけは失恋です。カッコよくキレイになって相手を見返したいと思って始めました。講師はリオでも活躍されてるステキな日本人女性で、彼女のサンバへの熱い思いを吸収してるうちに、元彼のことなんかすっかり忘れました。サンバの躍動感と美しさにハマっていったんです」
純粋にサンバを楽しむだけならお金はかからないが、浅草サンバカーニバルのようなイベントに出ると「ファンタジア」と呼ばれる豪華な衣装を用意しなくてはならない。これが実費でなかなかの出費とのこと。
「パシスタとして出るなら背負い羽根や髪飾りなどオーダーメイドで、最低でも数十万円ですから、海外旅行に2、3泊は行けるほどのかなりの金銭的な負担になります。ただ、お金のかかる趣味ですが、サンバから得られる達成感や仲間との一体感は他に代え難いんです」
ちなみに、露出度の高い衣装で踊ることについて周囲の反応は?
「友人や恋人、職場のみんなもこの活動を応援してくれてます。恋人は最初に見に来てくれたときは怖かったみたいで多少引いてましたが(笑)、以降も遠くで見守ってくれています(笑)」