52歳ダンサーも「目立ってナンボ」
地方から浅草サンバカーニバルに駆けつけたのは大阪府を中心に活動する「カンタ・ブラジル行進部」。このチームに所属するエリさんはサンバの魅力をこう語る。
「13年前に友達のお母さんが始めたサンバ教室で思いっきり踊り、非日常を味わう醍醐味を知りました。
特にこのような大規模なカーニバルではアドレナリンが噴き出し、日常を忘れて爆発できるところが最高に楽しいです」
しかし、カンタ・ブラジル行進部は今回をもって浅草出場は最後だという。
「メンバーの高齢化はもちろん、運営にもさまざまな工面が必要で、リーダーも大変だったと思います。
4年ぶりのカーニバルは本当に楽しかった。最後のいい思い出になりました! 今後は、関西でサンバを楽しみたいと思います」
小判をモチーフとした羽根を背負ってひと際目立っていたのは、東京神田が拠点の「アミーゴス カリエンテス」の伊藤磨古さん、52歳。
「サンバを始めたのは7年前とわりと最近ですが、もう3度も本場ブラジルのサンバを見に行くくらい、どハマりしてます。
今年のチームのテーマは“ええじゃないか”。これは目立ってナンボだと思い、小判を背負いました。これでもふだんはホテルの受付やってます(笑)」
ダンサーや打楽器隊あってのサンバチームだが、数百名ものメンバーを取り仕切る総代表「プレジデンチ」がいなければまとまらない。
S1リーグで大トリを務めたのは、81年から始まった浅草サンバカーニバルに初回から参加する「G.R.E.S.仲見世バルバロス」。この200名ものメンバーが在籍する由緒あるチームの3代目プレジデンチは、ふだんはIT企業のセールスエンジニアを務める44歳の鶴見太朗さん。
「チームを任されたのは2022年のこと。サンバへの情熱はメンバー一丸ですが、昨今の苦労はなんといっても経費の工面。衣装や山車の作成に必要な物品をブラジルから輸入しますが、為替の変動も含め材料や運搬費が高騰し、財務面に重くのしかかってます。大人が本気で遊ぶためには会費の値上げの協力が不可欠ですが、理解あるメンバーにはいつも感謝しています」
4年ぶりに爆発した浅草サンバカーニバル。来年は縮小版ではなく、浅草の馬道通りから雷門通りまでを練り歩く、かつての“北半球最大級”のサンバカーニバルとして、さらに華やかに復活してほしい。
取材・文・撮影/河合桃子
集英社オンライン編集部ニュース班