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NPB最高峰を凌駕する山本由伸の実績

どこまで、進化するのだろうか――。

2023年、春。宮崎県宮崎市の清武総合運動公園で行われたオリックス・バファローズの春季キャンプを取材し、そこでエース・山本由伸のブルペン投球を目の当たりにして感じたことだ。

当時、すでに話題となっていたのが2023年仕様の新フォーム。もともと、身体の“捻り”や“タメ”をあまり使わないフォームだったが、そこからさらに無駄を省いたような新投法から、切れ味鋭い真っすぐと変化球が、次々とキャッチャーのミットに吸い込まれていく。

無駄を省く――。といえば聞こえはいい。ただ、大きく足を上げることもなく、軸足にしっかりと体重を乗せるわけでもなく(実際はしっかりと乗っているはずだが)、すり足気味にステップする新フォームを見て、「タイミングが取りにくそうだな……」と感じると同時に「果たしてこれで、強いボールを投げ続けることはできるのだろうか」という疑問が生まれたのも確かだ。

しかし、目の前のブルペンではあきらかに他の投手とは違うボールを投げている。しかも、並んで投げているのは“その辺”の投手ではない。宮城大弥、宇田川優希、山﨑颯一郎……1か月後に侍ジャパンの面々としてともに戦う日本最高峰の投手たちと見比べても、山本由伸のボールは異彩を放っていた。

そこから、開幕前のWBC、3連覇を目指して戦うレギュラーシーズン。山本由伸は、昨年までと変わらない姿――いや、さらに進化した姿を見せつけている。

WBCでも大活躍だった山本由伸 写真:CTK Photo/アフロ
WBCでも大活躍だった山本由伸 写真:CTK Photo/アフロ
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9月20日時点で21試合に登板し、14勝6敗、防御率1.32、奪三振148、奪三振こそロッテ・種市篤暉や西武・平良海馬と競っているが、勝利数、防御率、最高勝率のタイトルはほぼ確定と言っていい。奪三振も加えた『投手四冠』となれば、2021年から驚異の3年連続となる。昨季の2年連続ですらNPB史上初の快挙だった。

チームをリーグ3連覇に導き、当然、ここから先はポストシーズンでの2年連続日本一を決す戦いも待っている。日本シリーズでは昨年、わき腹を痛めて不完全燃焼に終わっていただけに、今季はその“リベンジ”も期待される。

しかし、新フォームも含めた“進化のスピード”を見ると、筆者も、そしてもちろん多くのファンも、さらにそこから“先の世界”に思いを馳せてしまう。