宮城大弥は、技巧派なのか?
宮城大弥は、「愛されキャラ」だ――。
球団の公式YouTubeや選手のSNS、グラウンド上での選手たちとのやり取りをみるだけでも、それはわかる。
シーズン開幕前に行われたWBCでも、侍ジャパン最年少選手として周囲からかわいがられている姿が何度となくメディアで放送された。
筆者も、これまでに、ブレイクを果たした2021年シーズン中、昨季シーズン終了後、そして今春の宮崎キャンプの3度ほど、宮城本人をインタビューする機会に恵まれたが、いつ話を聞いても物腰が柔らかく、ときに冗談を交えながら笑顔で話をしてくれたのが印象的だった。
しかし、ことマウンドで見せる表情はグラウンド外のそれとは大きく異なる。
高卒4年目、まだ22歳ながらプロ2年目から3年連続2ケタ勝利。9月20日の優勝決定時点で、すでにプロ通算勝利数は35を数える。宮城の同期は佐々木朗希(ロッテ)、奥川恭伸(ヤクルト)、西純矢、及川雅貴(ともに阪神)といった好投手がズラリと並ぶ“当たり年”だが、その中でも宮城の勝利数は群を抜いている。
宮城の投球スタイルはたびたび「技巧派」「ベテランのようだ」と称される。たしかに、マウンド上での落ち着きは22歳のそれではないし、現在は封印しているが、以前は試合中、シチュエーションによってプレートを踏む位置を変えるなど、「若手」とは思えない投球術が宮城の魅力でもある。
だが、本当にそれだけだろうか――。
プロ野球選手としては小柄な171センチという身長や、サイド気味のスリークォーターというアームアングル、さらには“左腕”というスペックはたしかに「技巧派」のそれだ。しかし、数字を見ればそれが「すべて」ではないこともわかる。
左腕から繰り出される速球は150キロを超える。奪三振率(9イニングあたりの奪三振数)も、プロ通算で7.79を誇る(今季は9月21日時点で7.50、リーグ5位)。この数字を見てもなお、宮城を「技巧派」の一言で片づけていいのだろうか。
剛速球を投げることができ、三振も奪える。そのうえで、四隅を突く制球力やマウンド上での落ち着きを併せ持つ。宮城は「本格派」と「技巧派」のハイブリッドだ。