自動運転車のAIが「お安い御用で!」という時代が到来

こうした傾向はパソコンだけに留まりません。

独メルセデス・ベンツグループは2023年6月、米マイクロソフトと連携し、同社製の自動車にChatGPTによる対話型AI機能(図2)を試験的に搭載すると発表しました。

同社は以前から、音声でエアコンを操作したり音楽を再生したりするためのシステムをクルマに搭載しています。これに加えて今回のChatGPTの導入により、さらに高度できめ細かい操作が可能になります。

たとえばドライバーが運転中に音声で訪問先の詳細を尋ねたり、夕食のレシピを提案したりすることが可能になるといいます。

この対話型AIの機能は、まず米国で90万台以上のクルマに約3ヵ月間試験提供され、そこでドライバーから得られた反応をもとに本格的な導入が進められていく計画です。

AIのおかげで、スキルやマニュアルが要らなくなる時代は人間にとって幸せなのか? “機械が人に合わせる”時代に突入しはじめている_3
図2 メルセデスベンツのChatGPTによる対話型AIシステム。『AIと共に働く - ChatGPT、生成AIは私たちの仕事をどう変えるか -』より

こうした車載の対話型AIは、今のところはいわゆる「インフォテインメント(情報・娯楽システム)」を音声で操作する機能に限定されていますが、いずれは自動運転技術の実用化と並行して「音声で行く先を指定すれば、クルマが自動でそこまで運んでくれるようなAIシステム」へと発展していくのではないでしょうか。

たとえば自動運転車に乗り込んだ人間がシートベルトを締めながら「急いで〇〇空港まで行ってくれ。途中の道は多分混んでるけど、何とか30分で着けないかな?」と頼むと、自動運転車のAIが「お安い御用で!」などと(言うかどうかまでは分かりませんが)行く先まで無事運んでくれる──そんな時代が間近に迫っています。