越冬できる場所を求めて何キロも飛ぶ

それでは、被害の現場では、実際にどんな「カメムシ対策」をしているのだろう。前出の千葉県の60代のコメ農家男性に聞いてみた。

「カメムシの対策はいろいろやってますよ。稲の穂が出る前から雑草をしっかり刈り取ったり、田んぼのまわりに除草剤を撒いたりですね。それでも注意報が出てるから安心できないんで、朝夕の見回りは欠かせません。見回りするとカメムシがいつの間にか服についてくるので臭くて嫌ですけど、被害を抑えるためには仕方ないですから。経費を節減したいから、なるべく殺虫剤も撒きたくないんだけど、そうも言ってられませんしね」

プロの農家と違って、都市生活者にはカメムシはあまり馴染みがないかもしれないが、大量発生すれば住宅まで飛来して、網戸の隙間から入り込んでくることもある。間違って踏んづけでもしたら、あのとんでもない臭いに襲われる。

コメどころで有名な新潟県の害虫駆除業者「ムシムシバスターズ」代表の五十嵐辰朗さんにカメムシ対策を聞いてみた。

果樹につくクサギカメムシ(提供/こうち農業ネット)
果樹につくクサギカメムシ(提供/こうち農業ネット)

「コメ農家にとっては斑点米カメムシ類の被害が懸念されてますが、一般家庭で注意が必要なのは、果樹カメムシ類に分類される『クサギカメムシ』や『スコットカメムシ』です。これらは家屋にも浸入してきますし、夏場に生育が進み発生する点では斑点米カメムシ類と一緒なので注意が必要です」

それはいったいどうやって気をつければいいのだろうか?

「根本的な対策はありません。果樹カメムシ類はスギやヒノキの実を餌にしますが、スギやヒノキが近くになければ大丈夫なのかっていうとそうでもなくて、越冬できる場所を求めて何キロも飛んでくる。しかも、カメムシは身体をペシャンコにして1〜2ミリの隙間があればくぐり抜けられるので、窓や網目の大きい換気扇から入ってきてしまうんです。地域ごとの標高や気温によって飛来してくる時期も変わってくるんですけど、こちらも8月頃から増えはじめており、これからいっそう注意が必要です。

千葉の民家の窓についたカメムシ
千葉の民家の窓についたカメムシ

絶対にカメムシを家に入れたくないのなら、この時期に窓を一切開けないことですね。家でもできる簡単な対策としては、入ってきそうなところに殺虫剤を撒いておくとか。洗濯物に紛れて入ってしまう可能性もありますけど、これにはハーブ系の虫除けが有効です。洗濯物を外に干してる限り完全な予防はできなくても、そういった対策でかなり効果はあると思います」

カメムシ注意報が発令されている地域では、一般家庭だけでなくリゾートホテルや温泉旅館からの駆除依頼も相次いでいるという。

トラップに集まったバケツいっぱいのカメムシ(提供/高知県病害虫防除所)
トラップに集まったバケツいっぱいのカメムシ(提供/高知県病害虫防除所)
すべての画像を見る

「駆除というより侵入防止って感じで、発生する前から依頼されることが多いです。わいてからじゃ遅いですからね」

カメムシとの熱い戦いはまだまだ続きそうだ。


※「集英社オンライン」では、自然災害や動植物被害について取材をしており、情報を募集しています。下記のメールアドレスかTwitterまで情報をお寄せ下さい。

メールアドレス:
shueisha.online.news@gmail.com

X(Twitter)
@shuon_news

取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班