リストラされて、再び、ひきこもる

さらに、高梨さんにはLD(学習障害)の傾向もあった。小学生のころから算数が苦手で、教師に「さぼっているんじゃないか」と疑われたほど。高校入試では、数学は15点しか取れなかったが、国語でほぼ満点を取り合格できたのだという。

今でも計算には、すごく時間がかかるので、職場でも金銭管理がうまくできなかった。

「学校に来られないヤツは来なくていい」担任から“いない者”扱いされ不登校…就職でもつまずき、ひきこもりに。親に「働かないなら家から出ていけ!」と言われ、遂に…_5
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それでも、高梨さんは働き続けた。違う仕事を探すことは考えなかったのかと聞くと、弱弱しく笑って否定する。

「就活も全部失敗しちゃって自信もないから、他の仕事ができる気がしなくて。休み明けはもう行きたくないと思いながら、歯を食いしばって頑張っちゃいましたね」
 
不器用なところもあるが律儀な人柄なのだろう。そんな高梨さんを評価してくれる上司もいて、アルバイトから正社員になる話も出ていた。だが、折悪しく、東日本大震災が起こる。高梨さんが働くゲームセンターもガラスが割れたりして、壊滅状態に。

経営は次第に苦しくなり、震災から2、3年経つと人員整理が始まり、高梨さんはリストラを言い渡される。

心が折れた高梨さんは再び、家にひきこもってしまう――。

(後編)へ続く

(後編)『「ひきこもりが社会に出てくる時は大抵、もめます」不登校、就活の失敗、リストラ、母親の介護疲れで4度のひきこもりを繰り返した男性が、それでも「最終的にものを言うのは“人とのつながり”」といえるワケ』

取材・文/萩原絹代 写真/shutterstock

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