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あなたもしているかもしれない、無意識の噛み癖

ブラキシズムと全く同じとはいえないようですが、ブラキシズムとの関係が疑われている「歯牙接触癖」についても、触れておきましょう。

これは、英語で歯牙接触癖を意味する「Tooth Contacting Habit」の頭文字をとって、「TCH」と呼ばれています。東京医科歯科大学歯学部付属病院顎関節治療部部長(2000年当時)だった木野孔司先生たちが、世界に先駆けて提唱した言葉であり、概念です。

昼間、無意識の状態でお口を閉じていると、奥歯が上下で噛んでいる、もしくは当たっている、という癖を持っている方々がいます。この癖が、TCHです。

「口を閉じたときに、歯が当たってはいけないのですか?」

「口を閉じれば、そりゃ、普通は当たるぞ」

「昼間はバカみたいに、口を開けて生活しとれってことかい?」

「口を閉じて奥歯が当たらないように、浮かしておけってことかい?そんなことすりゃあ、あごがガクガク動いちまって、変な感じがするで〜」

過去にこのTCHについてご説明したとき、患者さんからこんなことを言われました。

昼間、お口を閉じているとき、上下の奥歯が当たっているかどうかは、あまり意識することがないと思います。みなさんも、ご自分のお口で確かめてみてください。お口を自然に閉じたとき、奥歯が上下で噛んでいませんか。

口を閉じているとき、無意識に奥歯が当たっていませんか? 歯の天敵「TCH」の噛みグセが歯を失うリスクが増大させている!_1
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本来は、奥歯も前歯も、上下の歯が触れていないのが正常(普通)とされています。奥歯は、上下が触れるか触れないかの位置関係、もしくは、一定の距離(0・1〜2・0㎜)を置いて当たらない状態を保つことが、お口の健康上望ましいといわれています。この一定の距離を、「安静空隙量」といいます。

ご自分では、気づいていないかもしれませんが、案外、しっかり当たっていたりすることもあります。

「それが何か問題なんですか?」「当たっていてはいけないんですか?」

と、逆に聞かれることもよくあります。

通常、多くの人は、奥歯の安静空隙を保った状態でいると思いますが、そういう人でも、緊張したり、我慢したり、何かに集中しているときに、無意識に奥歯が当たっていたり、噛みしめていることがあります。

この一時的なTCHは、通常の状態に戻ればなくなりますが、なかにはそれが癖になって、いつも奥歯を当てていたり、奥歯が当たっていないと下顎が安定しなかったり、精神的に落ち着かないという人がいるようです。

少しくらいの噛み癖なら問題はないのですが、これが習慣になって長く続くと、いろいろな問題が出てくることがあります。

歯の根のまわりには、歯根膜という毛細血管や神経組織に富んだ組織があります。歯が当たっていると、その噛んだほんの些細な力の刺激が、歯根膜を通して脳に送られます。すると脳は、反射的に、「咬め!」という指令を出します。

太古の昔から、動物は食べ物を一度口からはなしたら、しばらくは食べ物にありつけないことを知っていました。ですから、咬んだらはなすな、もっと咬め!と、脳は咬む筋肉(咀嚼筋群)に指令を出し続けるのです。

ということは、歯が当たっていて刺激が加わり続ける限り、あごを動かす筋肉群は休むことができないのです。

そんな状態が続いたら、どうなるでしょうか。

長い年月の間に、歯や歯周組織はダメージを受け続けます。痛めつけられた歯にヒビ割れができる、歯が咬耗して形が変わる、噛み合わせの高さが変わる、歯並びが経年変化する、歯頸部付近の歯槽骨(歯を支えている骨)の歯根膜空隙が広がって歯槽骨吸収が進む、場合によっては、歯が欠けたり、歯が割れて抜歯になることもあります。ブラキシズムと同じような影響が出るのです。