社会人の勉強には、「環境を整える」ことが重要な要素になる

単語帳を手に取ることすら忘れてしまうなら、さらに行動のハードルを下げないといけません。たとえば、単語帳を手に取ってしまうような仕掛けを考えます。

一例ですが、「単語帳を3冊ぐらい買って、カバンの中とベッド、トイレに置いておく」というのも、効果的でしょう。そうすることで、手持無沙汰になったときに、単語帳を開きたくなったり、目に入ることで「やらなきゃ!」という気持ちを起こさせたりするようにするのです。

実際に社会人の英語学習者の方に、「冷蔵庫の中」に単語帳を入れてもらったこともあります。

その方は、家に帰るなり、いつもビールを飲むという習慣がありました。そこでその習慣を逆に利用して、「冷蔵庫を開けると、ビールの前に単語帳が置いてある」状態を作り出したのです。きんきんに冷えた単語帳です。

ビールを飲みたければ、単語帳を手に取らなくてはいけない。このように、まずは「やらざるを得ない」仕組みを作ることが大事なのです。

入浴剤と英文のプリントをセットにしてジップロックに入れてもらったこともあります。お風呂に入るときに、好きな入浴剤を手に取る、お風呂に入浴剤を入れて湯船につかると、英文のプリントしかないのです。

社会人の勉強には、「環境を整える」というのも、重要な要素の一つです。

そして環境を作ることで、行動を起こすまでのハードルを極限まで下げるのです。

一見、勉強にいきなり取りかからないというのは遠回りに見えるかもしれません。しかし、長いスパンで勉強を続けていくことを考えると、むしろこれが一番の近道です。

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そんなめんどくさいことやってられない、と思う権利があるのは、継続が得意だと胸をはって言える人だけ。継続できないなら、一見すると回り道に見える「環境作り」をしてみてください。

ハードルを極限まで下げると、行動自体がいつのまにか「当たり前」になっていきます。こうすると、家に帰ったら、無意識のうちに単語帳を手に取るようになっていき、半自動的に勉強を続けることができるようになります。

単語帳を手に取れるようなったら、次は「単語帳を開いてみる」というステップに進みましょう。

それができたら、ちょっと声に出して遊んでみたり、意味をチラ見してなんとなく勉強をしている形にしてみましょう。

もちろん、どのページから始めてもいい。適当に開いたページで構わないんです。
「チラ見」まで習慣化できたら、初めて「ちょっと1ページぐらい覚えてみる」で十分です。

実はこの段階まで来ると、だいたいの人は、単語の学習を習慣化できています。このように勉強の習慣をつけるのは、1カ月もかかりません。

というのも、「ただ単語帳を手に取る」だけで、人間は行動をやめてしまうことは少ないからです。

本は手に取れば、自然とページをめくりたくなるもの。だから実際は、ここまで細かく分けるのは極端なケースです。

ほとんどの人は「ちょっと開いてみるか」くらいまでは、わりとすぐに習慣化できます。
こうして、行動を細分化してみれば、習慣化は思ったよりと簡単にできます。習慣化さえしてしまえば、後は半自動的に目標まで進めます。

このように、やる前の「準備」はとても大切な要素です。「いつでも単語帳にアクセスできるようにしておく」という仕組みを作る。そういう環境を整えておくところから、習慣は始まっていくのです。