解説: 過保護型とは?

過保護型の保護者は、子ども本人が望む以上に世話を焼き、手助けをしてしまいます。子どもが失敗しないように先回りして安全を確保したり、障害を取り除いたりします。

その結果、子どもは、本来なら発達の過程で身につく問題解決能力が身につきません。

子どもを目の届くところに置いて、庇護 ・保護のもとで育てたいという気持ちから支配的になり、監視します。すでに子どもが自分で判断できる年齢になっていても、親が判断して援助をし続けます。子どもは依存的になり、自立心が育ちません。
 
子どもから援助を求められることに価値を見出す場合、共依存に陥りやすくなります。必要以上に依存しあい、なかなか抜け出ることができません。

子どもは我慢する経験や失敗に対処する経験が少なく、ストレスに弱くなります。失敗の原因を自分に求めることができず、他人や状況のせいにしがちになります。失敗を責められると意気消沈して何もできなくなるばかりか、責める側に攻撃心を抱き、人間関係をシャットダウンしてしまうことがあります。

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過保護型は自己成長の機会を奪う

ヒロカズの両親は典型的な過保護型でした。何でも先回りしてやってあげるし、失敗したら尻ぬぐいをしてあげる。子どもがかわいく、大事だからと言うのですが、度が過ぎています。
 
たとえば、母親はヒロカズが脱ぎっぱなしにする衣類を回収しては洗濯し、きれいにたたんで部屋に置いてあげていました。まだ小さいうちはいいでしょう。
 
しかし、小学生にもなれば自分で身支度ができるようになります。洗濯物をとりこむ、たたむ、しまうなど「お手伝い」をしている子は多いはずです。そのような機会を与えることなく、大人になっても洗濯物をたたんであげ続けるというのは普通ではありません。「メイドか!」とツッコミを入れたいくらいです。
 
ほかにも、学校の持ち物を毎日チェックしてあげる、宿題を代わりにやってあげる
などが日常茶飯事でした。

テーマパークの近くに引っ越すことや、幼稚園から大学までの一貫校に行かせることは、それ自体は別にかまわないのです。よい面はもちろんあると思います。ただ、一事が万事この調子で、先回りを続けているからおかしくなります。一つひとつはさほどたいしたことではないように見えても、全体としてバランスを大きく欠いています。
 
これでは本人が課題解決していく力が育ちません。問題に直面することが少なく、うまくいくのが当たり前の世界で生きているからです。
 
ヒロカズは、物事がうまくいかないときは、「援助が足りないからだ」と考えがちでした。寝坊して学校に遅刻したら、「お母さんが早く起こさなかったからだ」「持ち物の準備をしてくれていなかったからだ」と考え、腹を立てます。失敗を他人や環境のせいにして自ら改善することがありません。
 
本来なら、文化祭の実行委員を務めるという課題は、成長の機会だったことでしょう。アイデアを練ることやみんなの意見を聞くことなど、試行錯誤の中で学びを得られたはずです。その経験を通して自信もついたに違いありません。ところが、「苦労をさせたくない」という気持ちが強い両親が、代わりにあれこれやることでその機会を奪ってしまいました。