大学のレポートも親がやり、父親のコネで就職

家で文句を言うと、「こんな企画はどうかしら」「いや、こっちのほうがいいんじゃないか」と両親が頭をしぼって考えてくれた。他の高校の文化祭のリサーチまでして、アイデアをまとめる。息子のためだと喜んでやっている両親を眺めながら、ヒロカズは「まぁいいか。最後は親がなんとかしてくれるんだし」と思った。
 
大学では単位が足りず留年したのだが、その際に提出しなければならないレポートも親が手伝ってくれた。
 
就職活動も積極的ではなかったので、大学4年の冬になっても1社も内定がとれずにいた。このときも、父親が見かねて知り合いの会社を紹介してくれたので就職することができた。

「これで安心だな」

父親はそう言ってヒロカズの背中をぽんと叩いた。

「家から通える職場だし、よかったわね」

母親も嬉しそうにしている。

「親がいないと、どうせ何もできないしな……」と思ったヒロカズは、半分諦めのような気持ちで仕事に就ついた。しかし、仕事にまったく身が入らない。営業職に就いたが、「外回り」と称してパチンコをして時間をつぶした。

息子の大学レポートも代筆する「超過保護親」…30歳引きこもり男性が覚せい剤で逮捕されて発した衝撃の言葉とは_2

会社から解雇されネトゲで暇つぶしをしていたら、手を出してしまった

別にこんなのやりたい仕事じゃない。当然ながら営業成績は酷いありさまだった。上司から何度も指導を受けたが、仕事への姿勢を改める気が一切ないので、さすがの親のコネも通用せず、ついに解雇されてしまった。
 
その後も同じようなことを繰り返し、しまいには引きこもりに近い状態に陥るヒロカズ。一日中パソコンでゲームをし、なんとなく時間をつぶして過ごしていた。
 
30歳を過ぎた頃、ネットサーフィンをしていて「S」のことを知った。

「強烈な快感」「時間を忘れられる」といったキャッチコピーで販売されており、何か刺激がほしいと思っていたヒロカズの興味を惹ひいた。しかも、ネット通販で簡単に手に入るらしい。
 
早速、購入すると自宅に半透明の粉が届いた。使用方法に書かれている通りに、その粉を紙の上に出し、下からライターであぶって蒸気を吸う。

その途端である。

髪の毛が逆立つような強烈な快感が体を駆け抜けた。心身ともに活動的になった感じで、まったく疲れを感じない。一日中パチンコ屋にいても熱中できてしまう。

ヒロカズは「S」にすっかりハマった。「S」とは覚せい剤である。常習するようになった頃、家を飛び出して走り回るなどの奇行が出るようになり、通報されて検挙に至った。

息子の大学レポートも代筆する「超過保護親」…30歳引きこもり男性が覚せい剤で逮捕されて発した衝撃の言葉とは_3

刑務所に入った30歳息子と面会する異様な両親

刑務所に入ったヒロカズのところへ、両親は足しげく面会にやって来る。
「いじめられていないか」
「寒くないか」
「お腹はすいていないか」
 
30歳過ぎの息子にそう声をかける姿は、ある種異様に映る。「覚せい剤の使用程度で執行猶予がつかないのはおかしいよな」「悪い裁判官に当たったもんだ」という会話すら聞こえるのだった。