ストリートピアノ撤去の陰にYouTuberの存在

また、苦情は騒音問題だけではなかったようだ。

「『脚立にスマホを設置して長時間ピアノを弾いている人がいて、順番がまわってこない』『ピアノ近くの歩行者が映るようにスマホを設置していて、自分が映っていないか不安だ』といった演奏者の動画撮影に伴う意見も多く寄せられました。
私たちも直接見てはいないので、その方たちがYouTuberだったかどうかはわかりませんが」(同)

今年3月から利用休止になっている名古屋駅直結の商業施設、JRゲートタワーに設置されたストリートピアノの担当者も「トラブルの原因のひとつに、YouTuberの存在があったのではないか」と振り返る。

「実際に見たわけではないので断定はできませんが、施設関係者に話を聞くかぎり、スマホで撮影しながら鍵盤を強く叩くなど、派手な演奏をしている方がいたとは聞いてます。
当施設は名古屋の中心地で人も多い。そのため、パフォーマンス重視の演奏をしてしまい、苦情につながってしまったのではないか、と我々も推測しています」

JR両国駅(東京都)のストリートピアノをマナーを守って利用する一般の利用者
JR両国駅(東京都)のストリートピアノをマナーを守って利用する一般の利用者

動画の撮影について「演奏者のみ映るかたちであれば問題なし」としている自治体も多く、SNSでの事前告知やチケットの販売、投げ銭といった営利利用しないかぎりは、YouTuberの撮影を許可しているところも少なくない。

2021年3月に設置されたJR両国駅(東京都)構内のストリートピアノもそのひとつで、YouTube上には当地でのさまざまな「弾いてみた動画」がアップされている人気のスポットだ。
記者が訪れた8月某日も、ストリートピアノ周辺は小学生から部活帰りの中学生などを含めて多くの人でにぎわっていた。

「スマホで撮影してる人って、やっぱり腕に自信があるからか、お上手な方が多いじゃないですか。暇なときは、ここでピアノをずっと聞き入っちゃうこともありますし」(60代女性)という駅利用者から好意的な声がある一方で、こんな思いをした人も。