とにかく過激でメチャクチャで面白かったあの頃
「昔はよかった」というのは、いつの時代にも存在する、旬を過ぎたおっさんおばさんの使う常套句で、若い世代から“老害”と揶揄されるような、回顧的感傷にすぎないことはわかっている。
「昔はなんでもありだった」というのも、その類の言い草だ。
“自分は今より刺激的な時代に青春を過ごしたんだぜ”という、それこそ若者にとっては毒にも薬にもならない、つまらない自慢にすぎないのだろう。
それでも敢えて言いたい!
僕が中高生だった1980年代の音楽界のアンダーグラウンドシーンは、なんとまあメチャクチャで面白かったことかと。
僕がこれから書くその頃の出来事を読んでも、今の若い人は「は? これのどこが面白いの? キモっ」と思うだけかもしれない。
また僕と同世代でも、大多数の人は読むだけで気分を悪くするような話ばかりかもしれない。
でも僕は、当時のメディアでこうしたことを見聞きするたび、確かに心ときめかせていたし、ヤバければヤバいほどワクワクしたあの感覚を、今も懐かしく思い出したりするのだ。
そういうわけで、80年代のアンダーグラウンド音楽シーンの奔放っぷりを、少しだけ振り返ってみよう。
過激パフォーマンス編①
〜ザ・スターリン、JAGATARA、非常階段〜
直接的な暴力に訴えるわけではないけれど、普通だったら見る側に生理的嫌悪感を抱かせるパフォーマンスを、敢えておこなっていたバンドやミュージシャンをご紹介しよう。
まずは、遠藤ミチロウがみずから“3大変態バンド”と称した、ザ・スターリン、JAGATARA、そして非常階段から。
ザ・スターリン
ボーカリストの遠藤ミチロウ(1950-2019)自身は晩年のインタビューで、1980年代当時のことを、「あの頃は、めちゃくちゃ大会だったから」と自嘲的に語る物静かな人だ。
だが1980年代のアンダーグラウンド音楽シーンの中で、ミチロウ率いるザ・スターリンはもっともスキャンダラスでクレイジーなバンドとして名を馳せていた。
特に初期のステージのメチャクチャぶりは凄まじい。
ステージから客席に物を投げ込むパフォーマンスは有名で、投げ込まれたものは、生ゴミにはじまり、ブタやニワトリの内臓や頭、火のついた爆竹や花火、排泄物を混ぜた牛乳、ペンキ……。それに生きたイノシシやニワトリを客席に放ったこともあった。
ステージ上でミチロウが全裸になるのは毎度のことで、排泄や嘔吐ばかりか、自慰行為をしたり、客席最前列の女性客にナニをくわえさせたという逸話もある(無理やりではなく、客がすすんでくわえたらしいが)。
1981年11月に行われた、ある学校の学園祭乱入ライブ(学校側の許可が降りず、主催者の生徒と共謀したゲリラ)では、遠藤ミチロウが公然わいせつ罪で逮捕されている。
そうした行為は、オーディエンスの期待に応えてどんどん過激化していったものだが、あまりにも激しいステージが評判になると、ライブハウスやホールから軒並み出入り禁止措置を取られるようになった。