多動・不注意の傾向が高い子どもは、親がつい厳しく当たってしまう傾向が高い
ただし子どもの遺伝要因と親の非共有環境要因が双方の関係にかかわる程度は、多動・不注意傾向の高いグループも低いグループもどちらのでも同程度にかかわっているのに対して、共有環境要因のかかわりが、多動・不注意傾向の高い子どものグループのほうでより大きいことが示されました。
つまりもともと多動・不注意の傾向が高い子どもの場合に、親がつい子どもに厳しく当たってしまう傾向が高まり、それによって子どもが問題行動を起こしやすくなるのです。
これは親の子育てスタイルの方に問題があるということになります。
逆に言えば、子育ての仕方をもっと冷静に見直して、子どもが不注意だったり多動であったりしたからといって、むやみやたらにしつけを厳しくしすぎないようにすれば、問題行動もある程度抑えることができる可能性があるのです。
多動・不注意傾向の高い子だからということで「悪い子」であると決めつけるのではなく、問題行動をしでかしてしまった子どもの事情を冷静にくみ取る努力をし、そのうえで善悪の道理を示していくことが肝要なのではないかと思われます。
一方、多動・不注意傾向の低い、その側面では健常の範囲内にある子どもの「悪さ」はどう考えればよいでしょうか。
その場合、子ども自身のもつ問題行動の遺伝的傾向が高いほど、それに即して親の厳しい態度が導かれているという要素が、親自身の作り出す厳しさが子どもの問題行動を助長させるという要素よりも強いと考えられます。つまりそれは問題行動に対するしつけとして厳しくなるのは当然であるといえます。
悪いことは悪いというメッセージは、子どもの多動・不注意傾向の高低にかかわらず、子どもには知識として教えなければなりませんが、同時に子どもが「悪さ」をしてしまう状況、すなわちその子特有の非共有環境が何かを見極めて、その状況に陥らないように環境を整えてあげることも必要になってくるでしょう。
たとえば好きなものをきょうだいと分けあわなければならないときに、自分のことしか考えずに乱暴になってしまうことが多いとしたら、あらかじめ一人ひとりの分を分けておいて、一人ずつ渡すようにするというように。
文/安藤寿康
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